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第7話 何回だって
「ねぇ、いつくれる? 今日? 明日?」
「まそら、落ち着いて。とりあえず夜ご飯を食べようか」
「あ、そっか」
そう言ったモクレンが、アツアツの夜ご飯が載ったお皿を目の前に置いてくれた。お皿には、モクレンと一緒に皮剥きをしたじゃがいもと粉を混ぜて作ったものが載っている。名前は忘れたけど昨日食べたおいしいやつで、今夜はクリーム色のソースがかかっていた。
昨日のお昼にも同じ物を食べた。もっちりしていて食べたことがない味で、とてもおいしかった。昨日のはトマトソースだったけど、今日のはクリームソースだって言っていたから楽しみにしていたんだ。スプーンでもちもちと白いソースをすくってからパクッと口に入れる。
「んー、おいしい!」
「それはよかった」
「もっちりで最高! このソースもミルクとバターとチーズの味がしておいしいよ!」
「今日のはじゃがいもだけど、今度はかぼちゃを混ぜてみようか」
「もっちりがかぼちゃでできるの? すごいね!」
見た目は貝殻みたいなおもしろい形なのに、もっちりでとてもおいしい。ネネが作ってくれた黄色や桃色のグニュッ、モチッとした四角いのも好きだったけど、こっちのほうがずっとおいしくて好きだ。
「んー! おいしかった!」
あまりにおいしくて、あっという間に食べ終わった。そういえば、ここに来てからご飯を食べるのがとても早くなった気がする。いまだってモクレンはまだ半分くらいしか食べていないのに、僕のお皿は空っぽだ。
「おかわりする?」
「ううん、お腹いっぱいになったから大丈夫。それより、種は今日くれるの? それとも明日?」
僕はおかわりよりも種のほうが気になって仕方がなかった。できればモクレンの気が変わらないうちにほしい。だから何度も聞いているんだけど、そのたびにモクレンは少し困った顔をする。
「種族的本能だろうから仕方ないにしても、食事時にセックスの話をするのはどうかな……。いや、そもそも彼らは子孫を残す本能が強いだけで、快楽追求のためじゃないはずだし……」
また難しい話だ。僕にはわからないからドームを眺めることにした。
夜だからドームの外は真っ暗だけど、キラキラ光る星がたくさん見える。僕が夜空が好きだって話をしてからは、夜でも部屋の灯りをほんの少ししか点けないから星がよく見えた。
「うーん、とりあえずちゃんと調べてからにしようか」
真上を向いていた頭を戻したら、ご飯を食べ終わったモクレンが僕を見ていた。
「調べるって?」
「まそらが、ちゃんと卵を産めるかどうか調べるんだよ」
「この前産んだよ?」
「うん、だから念のためにね」
「そっか」
よくわからないこともモクレンに任せれば大丈夫。「調べるのはお風呂から出てからにしよう」と言われて、僕は大きく「うん」と頷いた。
ご飯が終わったら壁のへこんだところにお皿を載せて、後片付けはアルに任せる。早くお風呂に入りたかった僕は、モクレンの腕を引っ張るようにお風呂に向かった。
お風呂で洗いっこをしたら、先に出てから教えてもらった歯磨きをする。最後に口の中をすすいでトイレを済ませたら寝る準備は万端だ。先に全部終わってベッドの上でゴロゴロしていたら、モクレンが「じゃあ調べようか」と言って頭を撫でた。
「わかった」
「じゃあ、うつ伏せになってくれる?」
言われたとおり、ゴロンとうつ伏せになる。
「これでいい?」
「膝をついて、お尻上げてくれる?」
「こう?」
「うん。ちょっとパンツ脱がせるよ?」
パンツが脱げたら少しだけお尻がひんやりした。穿かなかったときはわからなかったけど、パンツって思っていたより暖かい。そんなことを思っていたら、お尻をむぎゅって掴まれてびっくりした。
「ひゃっ!」
「あぁ、ごめんね。これから卵を産むところを触って調べるからね」
「触るの?」
「うん、指を入れるけど大丈夫、ちゃんとローション……ええと、痛くないようにするから。それでも痛かったら教えてくれるかな」
「うん、わかった」
モクレンの指は僕のより大きいけど、卵よりは小さいからたぶん痛くないはず。そう思って待っていたら、ぬるぬるしたものがニュルッとお尻の中に入ってきた。うん、これなら痛くない。
「ん……やっぱり狭い。これは丁寧に解さないと駄目だろうな。それじゃあ、奥も調べようか」
「ぅ、」
「痛い?」
「痛くはないけど、なんか、ちょっと変な感じ」
「少しだけ我慢して。まそらは体が小さいから、たぶん俺の指でも届くと思うんだけど……あった」
「!」
モクレンの「あった」って声が聞こえた途端にお尻の奥がキュンってした。それに驚いてお尻がビクンって動いてしまった。
「痛かった?」
「い、痛くないよ!」
びっくりしただけで痛くはない。でも、モクレンの指が奥に当たるとキュンってして勝手にお尻が動いてしまう。
お尻が動かないようにがんばっていたら、モクレンの指がグニグニ動き始めた。痛くはないけど、奥がキュンキュンする。そのうちキュンっていうのが止まらなくなって、お尻がカクカク揺れ出した。
「なるほど、腸と産卵道の分かれ目は性感帯なのか。それに結構濡れてきたし、これならたしかに卵は産めそうだけど……」
モクレンが難しい話をしている。僕もどんな感じがするか言ったほうがいいんだろうか。でも、お尻の奥がキュンキュンするほうが気になって何も考えられなかった。僕は顔を一生懸命枕に押しつけて、変な声が出ないように必死に唇を噛み締めた。
「ひゃぅ!?」
がんばっていたのに、モクレンの指がどこかを押したら変な声が出てしまった。
「あぁ、きみたちにも前立腺はあるんだ」
「な、なに?」
「ここ、まそらが気持ちよくなれるところなんだけど」
「ひゃっ!」
「うん、感度良好だな」
奥でグニグニ動いていたモクレンの指が、今度は別のところをムニュッて押している。そこは奥よりもっと出口に近いところで、ムニュッてされるたびにキュンじゃなくてビリッとした。
「痛い?」
「いた、くは、ないけど! ひゃふ! なんか、ひゃう! なんか、へん、だよ!」
お尻がビリッビリッとして、うまく返事ができない。こんなふうになるのは初めてでびっくりした。ビリッとするたびに変な声が出て、お尻もビクッとして大変なことになってきた。
「ひゃっ! モクレン、これっ! へん、だよっ!」
「どういうふうに?」
「だって、ひゃふ! むにゅって、したらっ! びりって! ひゃん! 待って、変なの! お尻、びりって、ひゃう! ひゃっ! ひゃふ! ひゃあ!」
ムニュムニュされている僕のお尻は、ずっとビリビリ状態だ。おまけに口からは変な声がどんどん出てくるし、雄の証までビリビリしてきた。
大変なことになったと思った。お尻に中が壊れたんじゃないかと心配になる。だから「待って!」って何度も言っているのに、モクレンの指は全然止まってくれない。
「だめ! モクレン、むにゅってしちゃ! ひゃあ! だめってば! だめ! モク、だめ! だめだめ、ひゃう! ひゃっ、ひゃあ!」
すごく大きなビリビリがきて腰がガクンって大きく震えた。気がついたらシーツをぎゅうぎゅうに握り締めていて、足なんてずっとブルブルしている。
(な、何か、すごかった)
よくわからなかったけど、とにかくすごかった。
「ちゃんと種も出たね」
おでこを枕に押しつけたまま目を開けたら、大きく開いた寝間着の首の隙間から僕のお腹と雄の証が見えた。ピンッてなった雄の証から何かが出ている。先っぽから、とろーっと糸を引くみたいに白いのが垂れていた。
「ぼく、おもらし、した……?」
「大丈夫、白いのはまそらの種だよ」
「ぼくの、たね?」
「まそらも雄ではあるからね」
そっか、僕も種が出せたんだ。
「はじめて、たねが、でた」
「……もしかして初めての精通? いや、そもそも彼らがそういう体質だとは言えないし、俺たちの概念からは外れているだろうし……」
また難しい話だ。でも、いつもみたいにドームを見るのはちょっと難しい。なんとか膝立ちはしているけど、お尻がすごいことになっていて仰向けになれないんだ。足だってプルプルしたままうまく動かない。そんな状態なのに急に眠くなってきたからか、体がゆらゆら揺れているような気がした。
「モクレン、ぼく、たまご、うめる?」
眠る前に、これだけは確かめておかないといけない。
「ちゃんと産めるよ。それに、こうして気持ちがいいえっちもできそうだしね」
「……いまのが、えっち?」
「えっちの一つだよ」
そっか、いまのがえっちなんだ。初めてだったから、なんだかすごくて大変だと思った。でも……。
「きもち、よかったぁ」
途中でお尻が壊れたのかと思ってびっくりしたけど、最後は気持ちがよくてびっくりした。
「えっちって、きもちいぃ、ね……」
これなら一回で子どもが生まれる卵を産めなくても平気だと思った。えっちがこんなに気持ちいいなら何回だってできる。きっと種も何回だってもらえると思う。
「ちゃんと体を慣らしてから、えっちしようね」
「ぅん……」
モクレンに返事をしたところで我慢できなくなった僕は、ゆっくりと瞼を閉じた。
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