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第14話 襲うことに決めたんだ!

 僕が二度目の卵を産んでから、モクレンは卵の部屋に種をくれなくなった。少しずつ慣らしていこうねって言っていたけど、たぶん卵を産むときに僕がすごく痛がったからだと思う。  そりゃあ、卵を産むときはとんでもなく痛かった。もうあんなに痛いのは嫌だって思った。 「でも、僕は子どもが生まれる卵を産みたいんだ」  ただ産みたいだけじゃない。モクレンの種で卵を産みたいんだ。それなのに、モクレンはちっとも種をくれない。  ちなみにこの前産んだ卵は、ナントカって状態にして飾ってある。普通なら卵が大好きなラミアーのお姉さんたちが買い取ってくれるんだけど、近くにラミアーはいなかった。それじゃあどうしようかと思っていたら、記念だからって部屋に飾ることになったんだ。  卵なんて飾るものじゃないのに、やっぱりモクレンはちょっと変わっている。それに僕は飾る卵じゃなくて、子どもが生まれる卵を産みたいんだ。 「お尻の奥にはくれるけど、そっちじゃ子どもが生まれる卵は産まれないのに」  種をちょうだいって言うたびに、モクレンは少し困ったように笑う。僕はモクレンを困らせたいわけじゃないから、種をちょうだいって言いづらくなった。 「どうしたらいいのかなぁ」  そんなことを考えながら、神様の塔の近くにある森の前までやって来た。この森には大きなサナギから生まれた大きな蝶々が住んでいる。  ネレイデスのお姉さんたちが来た次の日に、大きな翅を持つ蝶々がサナギから出てきた。上半身は小さな子どもの雄で、下半身は鳥みたいな姿だった。あれを蝶々って呼んでいいのかわからないけど、モクレンもよくわからないって言っていたから蝶々ってことにしている。  これからどうなるのか気になった僕は、様子を見るために森に通うことにした。今日はモクレンがお昼ご飯を持って追いかけて来るって言っていたから、蝶々を見てから一緒に森でご飯を食べることになった。 「今日は種をちょうだいって言えるかなぁ」  言いたいけど困らせたくない。困らせたくはないけど、そろそろ卵の部屋のほうに種がほしい。  何て言えばいいのかなぁと思いながら空を見上げていたら、黒っぽいものが飛んでいることに気がついた。鳥にしては変な形をしている。何だろうとじーっと空を見ていたら、今度は森の奥から何かがすごい勢いで走って来てびっくりした。 「え? なに? 馬?」  僕の目の前を横切ったのは馬だった。真っ白で小さめの馬が、少し先にある開けたところに向かって走って行った。そっちに顔を向けると、真っ白な馬の前に黒っぽいものが降りてきた。 「今度は何?」  ものすごい勢いで止まった馬が、ヒヒーン! って前脚を上げて鳴いている。そんな馬を威嚇するように、黒っぽいものがバッサバッサ音を立てながら翼を動かした。  一瞬、羽持ちかと思った。そのくらい大きくて立派な翼だったけど、よく見たら頭と前脚は鳥で下半身は獣だ。羽持ちは僕と同じような姿のはずだから、黒っぽいあれは羽持ちじゃない。 「……もしかして、グリフォン?」  旅をしていたときに一度だけグリフォンの子どもを見たことがある。あの子どもを大きくしたら、たぶんこんな感じだ。 「でも、なんでグリフォンが馬を襲ってるの?」  白い馬が必死に走っていたってことは、グリフォンから逃げていたってことだ。そこまでして逃げるのは食べられたくないからに違いない。 「グリフォンの好物って馬だったっけ? そういえば、好物じゃなくても馬を食べることがあるってどこかで聞いたような」  そうだ、大きな遺跡がある街でケットシーがそんな話をしていた。グリフォンと馬は仲が悪いけど、そんな馬をグリフォンは食べることがあるらしい。 (さすがに馬が食べられるところは見たくないかなぁ)  見ているだけで痛くなりそうだ。ちょっとだけ興味があったけど、やっぱり見るのはやめておこう。そう思って離れようとしたとき、ヒヒンという馬の鳴き声が聞こえてきた。  振り返ると、グリフォンが馬のお尻に乗っかっていた。鋭い爪がある前脚で馬の背中をしっかり捕まえて、大きなくちばしで首のあたりをガブッと噛んでいる。白い馬は必死に抵抗しているけど、体が大きくて翼もあるグリフォンには勝てっこない。 「何だかかわいそうだ」  でも、馬がグリフォンのご飯なら邪魔をするのはよくない。僕だって他の種類から見たらゲッて思うようなものを食べているのかもしれないし、おいしいご飯を食べているときに邪魔をされるのは嫌だ。 「でも、何か変だな」  さっきまであんなに暴れていた馬がおとなしくなった。たまにヒヒンと鳴くけど、それだけだ。それにグリフォンも馬の首をガブガブするだけで食べようとはしない。 「え? あれって、まさか雄の証?」  グリフォンの獣みたいな股の間からブルンと飛び出たのは、とても立派な雄の証だった。それが白い馬の尻尾の下に入ったと思ったら、今度は白い馬がブルブル震えてヒンヒン鳴き出した。 「へぇ。ヒポグリフはこうやって誕生するのか」  振り返ったら、お昼ご飯を入れたカゴを持ったモクレンが立っていた。 「ひぽぐりふ?」 「グリフォンと馬の間に生まれる、グリフォンに似た姿の生き物だよ」 「僕、見たことない」 「たぶん珍しいんじゃないかな」  そんなものまで知っているなんて、やっぱりモクレンはすごい。そう思いながら、もう一度グリフォンと馬を見た。  白い馬はすっかりおとなしくなっていた。そんな馬のお尻の辺りに、グリフォンが自分の腰をガンガンぶつけている。ここまでグチョグチョした音が聞こえてくるなんてすごい。それにグリフォンの雄の証が少し抜けるたびに白いものがポタポタ落ちるのも見えた。  グリフォンと馬を見ているうちに、なんだか僕のお尻までムズムズしてきた。 (僕も、あんなふうにもっと雄の証がほしい)  昨日の夜もモクレンに入れてもらったけど、あれじゃ全然足りない。もっともっと雄の証を入れてほしいし、お尻の奥じゃなくて卵の部屋のほうに入れてほしかった。  卵の部屋に種をもらってから、僕のお尻はすぐにムズムズするようになった。お尻の奥がキュンキュンして、とろーっとしたものがお尻から出てくる。それもこれも種がもらえないせいに違いない。 (僕、ずっと待ってるのに)  僕のお尻の奥にある卵の部屋は、モクレンの種がほしくてずっとウズウズしている。それなのにもらえないから、こんなふうにムズムズしてキュンキュンするんだ。 「そっか、グリフォンみたいにすればいいんだ」  白い馬を追いかけてきたグリフォンみたいに、僕がモクレンを襲えばいいんだ。  なんていい考えだろうと思った。モクレンの雄の証をお尻に入れたあと、自分で卵の部屋のほうに入れてしまえばいい。モクレンだってそこまでされたら絶対に種を出してくれる。 (うん、これならきっとうまくいく) 「モクレン!」 「うん?」  まだグリフォンと白い馬を見ているモクレンを見上げて、えいっと飛びついた。 「え? どうしたの?」  首に両腕を巻きつけてから、逃げられないようにギューッと抱きつく。力持ちのモクレンも、さすがにトトトと後ろによろけてそのまま地面に尻もちをついた。よーし、これならいける。 「僕、グリフォンみたいにモクレンを襲うことに決めた」 「え? まそら、ちょっと、」  待ってと言われる前に口にチューッとした。それから体重をかけてモクレンの上半身を地面に押し倒す。 「あはは、真っ黒な目がまん丸だ」 「まそら、どうしたの?」 「あのね、僕やっぱり卵の部屋に種がほしいんだ。だからモクレンを襲うことにした」 「へ?」 「種、いっぱいちょうだいね?」  見たことがないくらい目を大きくしたモクレンがおもしろくて、ニコニコしながら服を脱がせた。ズボンを脱がせてパンツも取ったら、少し大きくなったモクレンの雄の証がぽろんと出てきた。  まだ完全に大きくなっていないモクレンの雄の証を見ただけで、僕のお尻はヌルヌルになった。僕のほうはいつだって種をもらう準備は万端なんだ。 「モクレンの、もっと大きくなぁれ」  僕も急いで服とパンツを脱いで、モクレンの雄の証をパクッと食べた。口でパクッとしたら、すぐに大きくなるって知っているからだ。  びっくりしたモクレンが何か言っているけど、雄の証の先っぽを喉の奥まで入れたら何も言わなくなった。代わりに雄の証がどんどん大きくなって、モクレンもハァハァ気持ちよさそうにしている。 「ふはっ、すごく大きくなった」  ベタベタになった雄の証を両手でコシコシ擦りながら、今度は先っぽをペロペロする。これもモクレンの雄の証を大きくする方法だ。 「これなら、ちゃんと奥まで届くかな」  これだけ大きくなれば、お尻の奥にも卵の部屋にも届くはず。僕はモクレンの上にまたがって、大きくなった雄の証を右手で持った。そうして、雄の証目がけてお尻を下ろした。

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