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第20話 空虚

「次、俺な!」 「ッハ!(たま)んねぇ。樫原(カシハラ)さんに仕込まれて、上手くなってんじゃん」 「おい早く代われって」 ホテルの一室で、数人の組員たちが琥珀(こはく)の華奢な体に群がる。 汗とローションで(つや)めかしく濡れた肌は薄っすらと上気し、こぼれそうな丸い瞳が大粒の涙を(たくわ)え潤んでいる。 男たちはその体に次々と手を()わせ、小さな胸の突起や尻の割れ目を(もてあそ)びながら、その熱く柔らかな口腔(こうくう)を奪い合う。 ――ホテルで組員たちの相手をする。これが今日の依頼だった。 柚木が付き人と共に迎えに来た今朝、我が儘を言って樫原を困らせた挙げ句、強烈な睡眠薬を飲まされて無理矢理ここへ運ばれてきた。 「ほら、ちゃんと(くわ)えろよ」 膝立ちしている足の力が何度も抜けて床に崩れ落ちそうになり、前髪ごと髪全体を持ち上げられた。 一際(ひときわ)喉奥を激しく突かれ、苦しさに身悶(みもだ)える。 「前はあんなに抵抗したのに、やっぱり仕込みの成果だな。やっと自分の立場が分かったか?」 「コッチの方もよく解れてんじゃん」 「んーッッ!」 後ろの(すぼ)まりをなぞっていた太い指がズプリと侵入し、琥珀の体が跳ねた。 グチュグチュとひくつく内壁を()き回され、思わず逃げようとするも、まわりの男たちに四肢を押さえつけられる。 「こんなにダラダラ(こぼ)して、琥珀はいやらしいなぁ」 「エロい体にされて嬉しいんだろ?」 男たちが笑いながら琥珀の股間に手を伸ばした。先走りで湿った(たかぶ)りを握られ、執拗(しつよう)に先端を指で刺激される。 「あっ!アンッ……!ムグッ」 男の陰茎が、琥珀の嬌声(きょうせい)(ふさ)いだ。 体の弱いところを一挙に責められ、琥珀は背中を()け反らせてビクビクと達した。 「……うぅぅ……」 (こら)えていた涙が、小さな(うめ)き声と共にボロボロと流れ落ちた。 泣いたところで、このまま許されるわけもない。分かっていながら、恐怖と悔しさで涙が止まらない。 琥珀の泣き顔が、男たちの嗜虐心(しぎゃくしん)を煽る。 「あーあー。勝手にイッていいなんて言ったっけ?お仕置きするかぁ?なぁ?琥珀ゥ」 床にうずくまった薄い体を無理矢理起こされ、ベッドにドサリと投げつけられた。 「うぅ……」 「なぁ、もうさぁ俺らだけで……コイツ、ヤッちまわねぇ?バレなきゃいいだろ?」 1人の男の提案に、他の男たちもニヤつく。 「こいつも欲しそうだし、全員で輪姦(まわ)そうぜ」 「や……やめ……放せッ!……あ」 「大人しくしてろよ。ほんとは突っ込んで欲しいんだろ?お互い気持ちよくなろうぜ?」 男の1人が琥珀に馬乗りになり、足を持ち上げ大きく割り開いた。 琥珀の体が恐怖で震え出す。 必死に抵抗するが、子どものように軽い体は男1人で易々(やすやす)と組み敷けた。 「どうせ客相手にヤるんだろ?いっぱい練習しような」 男は硬く反り上がった陰茎を琥珀の穴に押し当て、グッと力を込めた。 「……あッ!……やっ!!」 ――ドカッ 目の前にいた男が蹴り飛ばされて、琥珀の視界から突然消え去った。 「テメェら、死ぬか――?」 青ざめた男たちの前に、柚木(ゆずき)が立っていた。 拳銃を取り出して、その場の全員にチラつかせる。 普段の妖艶(ようえん)な雰囲気はまるで無く、冷徹な視線だけがその場を鋭く突き刺した。 「琥珀を()っていいって誰が許可したよ……ああん?!テメェら全員ここから出て行け!!」 「は、はいぃッ!!!!」 柚木の怒号で男たちが慌てて部屋を出た。 琥珀は震えたまま、ベッドの上で固まっていた。 「チッ、好き放題されて汚ねぇなぁ。来いよ」 「――ふぅッ……あああ……んんッ」 柚木に強制されて、シャワーで体を流す。 琥珀はそのまま浴室の壁に押し付けられて、柚木の肉棒に激しく追い立てられていた。 「うッ!ああ!あッ……あッ……!」 擦れ合う度に上擦(うわず)った嬌声を上げながら、琥珀の顔が快楽に歪んでいく。 「も……やめてくださ……ああンッ!」 柚木は逃げようとする腰を強く引き寄せ、繰り返し何度も突き上げる。 時折り強引にキスをして、羞恥に身動(みじろ)く琥珀の舌を何度も(から)めとった。 「本番(コッチ)の練習の件は、樫原に伝えておいた。店に出るまでお前を(おか)せるのは俺と樫原だけだ。帰ったらすぐ、抱いてもらいな」 「……え?!あ、ああ、あああああ!!」 柚木と同時に、琥珀は果てた。 息も絶え絶えのうちに迎えが来て、部屋へと戻された。 ――ガチャッ 琥珀が深夜に部屋へ戻ると、樫原はソファでタバコを吸って待っていた。 「おう……帰ったか」 普段から淡々としている樫原。だが依頼の後は、肉体的にも精神的にも弱って帰宅する琥珀に対し、いつも決まって少しだけ優しく接してくれた。 初めのうちは、ひとしきり暴れたあと泣き続けて困らせた。 一晩中抱きしめられて、あやされたこともあった。 すぐに過呼吸を起こす体質を知っていて、落ち着くまで背中をさすってくれたこともあった。 いつだって決まって腕の中で、震える体を温めてくれた。 たまに与えらるその優しさに、琥珀はいつも少しだけ安心していた。 恥ずかしい仕込みも理不尽な依頼も、逃げ出したくて仕方がない。 けれど樫原の(たくま)しい腕の感触だけは、どうしてか嫌いにはなれなかった。 今日一日で受けた恐怖と辛さが、ふいに込み上げる。 まだ(きし)む体に残る熱が、(しいた)げられた記憶を鮮明に呼び起こした。 意識を無くして倒れてしまう方が、まだマシだったのに。 「――琥珀ぅ、これからちょっと俺と初めてのことしようなぁ。そこに手ぇ付いて(ひざまず)け」 「……?!」 ドクン!と、衝撃が走ったのが分かった。 柚木の言葉が、頭から離れない。 「あー!クソッ!ダメだ!!早くしろよ!!」 突然カッとなって琥珀を押し倒した樫原が、下着ごと琥珀のズボンを押し下げた。 床にうつ伏せになった薄い体のまだ濡れている穴に、ローションの先を強引に押し込む。 「や……!樫原さん!待って!やッ!!」 これまで後ろを解す仕込みは散々されてきた。けれど、樫原自身を受け入れたことは一度もない。 「嫌です……こんなッ……やだッッ!!」 怖がって身を(よじ)る琥珀の腰を、苛立った様子の樫原は容赦なく(つか)んで引き寄せた。 「柚木さんの命令だ!犬のお前は黙ってろ!」 太くて重い熱が、琥珀を強く穿(うが)つ。 そこに優しさなどは無く、あるのは単なる仕込み役としての惰性だけだった。 「あッ!うわッ!ああああ!!」 「勘違いすんじゃねぇ!こっちだって仕方ねェからやってんだよ!!!」 声を荒げられ、琥珀がビクリと震えて固まる。 樫原はすぐに、冷めた口調で告げた。 「俺はお前の仕込みだけやってりゃそれで認められるんだ。店に出るまで、俺のためにせいぜい頑張ってくれよ」 琥珀は喘ぎながら、樫原の言葉を呑み込んだ。 今日1番の痛みが、無慈悲にも小さな胸を(さいな)んでいく。 唯一の()り所だった温かさを失い、空虚になった心がゆっくりと凍りついていった。

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