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第6話
知的で、端整で、フェロモンたっぷりの魅力的な美男である包文維 が、クッと苦々しい表情になる。それを見た煜瑾 は不安になるが何も言えない。
「車だなんて…。勝てるわけがない…」
「何に?何に勝とうというのですか?」
眉間に縦皺を寄せた文維に、不思議そうな顔をした煜瑾が訊ねる。
「車以上のプレゼントだなんて、何があると?」
苛立ちや不満が入り混じる複雑な感情を必死で押さえ込みながら、文維は小さく呟いた。
「?文維に愛されること以上に、私を幸せにするプレゼントはありませんよ?」
無垢な煜瑾は、文維の男としての意味の無い対抗心など理解できない。
「あ、…ああ、そうですね」
煜瑾の清らかな心を前にして、己を恥じた文維は気まずそうに口を閉じた。
「私の、誕生日プレゼントのせいですか?」
純真で高貴な煜瑾には、文維の葛藤など理解できず、困惑した様子で首を傾げる。そんな煜瑾が愛しい。
この最愛の人に、いつでも幸せだと感じていて欲しい、と文維は心から願っている。今よりも、もっと、もっと幸せになって欲しい、幸せにしたい…。文維が心からそんな風に思えるのは、この唐煜瑾が最初だ。包文維という沈着冷静な男が、生まれて初めて狂おしいほどに恋したのだ。
「煜瑾っ」
「アッ!」
湧き上がる感情が抑えきれず、文維は煜瑾を抱き締めた。
「どうしたのですか?」
「とっても困っています…」
自分を強く抱きしめ、苦しそうに呟く恋人が心配で、煜瑾もまた腕を回してギュッと抱き返す。
「文維…?」
「今、煜瑾のことが愛おしすぎて、とっても困っています」
そう言われても、どうしていいのか分からず、煜瑾はゆっくり動いて文維の頬にキスをした。
「じゃあ…、寝室に戻り…、ますか?」
恥ずかしそうに、文維の耳元で煜瑾が小さく言った。
「堪らない誘惑ですね。…けれど、今日は買い物をして、外でランチを食べて、そして、ベッドに戻るのは夜にしましょう」
「文維…」
2人は少し体を離し、互いを見詰めて、心の奥から嬉しそうに微笑み合った。
そして、言葉を必要としないまま、唇を重ねた。
「さあ、支度をして、出かけましょう」
「はい」
煜瑾は立ち上がり、文維と手を繋ぎ、出掛ける準備を手早く済ませた。
「どこに行きますか?」
「文維と一緒なら、どこでもいいのです」
2人は顔を見合わせて、クスクス笑った。
「でも、私と文維の大好きなカステラを買って、それから文維の香りがするシャンプーとボディソープを買って、ランチは日本式のトンカツ屋さんに行って、台湾式カフェでマンゴープリンを食べて、夕食用にお寿司も買いましょう…。それから…」
「煜瑾が望むなら、全て叶えましょうね」
「…ありがとうございます、文維」
文維と煜瑾は仲良く手を繋ぎガレージに着くと、文維の愛車であるレクサスに乗って、浦東地区のまだ新しいショッピングモールへと向かった。
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