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第26話
2階には階段を上がり切って、中央の廊下を挟んで左右にドアがあり、突き当りに吹き抜けのリビングを見下ろすロフトのような張り出しの廊下がある。そのバルコニーのようになった場所に、心地よさそうなライトグリーンのソファセットがある。その上のオレンジのクッションが彩りよく、明るい気持ちにさせる。これも煜瑾 のセンスで選んだのだと、文維 にはすぐ分かった。
「文維…、ここが主寝室ですよ」
ソファセットに目を奪われていた文維が、煜瑾の声に振り返った。
煜瑾を追って、自分のために用意されたのであろう主寝室に入った文維は、またもニンマリとした。
壁はマリンブルーのグラデーションで、床の方は白が強く、天井に行くほど色が濃くなっている。
天井は床に近い淡いブルーだが、過剰な装飾の無いシンプル・モダンな、それでもかなり高価なシャンデリアが輝いている。
窓は大きく東側を向いており、朝日が差し込む眩い様子が目に浮かぶようだ。その前の分厚いカーテンは、ネイビーブルーの遮光性の高いもので、ゴールドの小さな星が散らされた、愛らしい柄だ。
「落ち着きがあって、それでいて遊び心もある、煜瑾のセンスが活かされたステキなお部屋ですね」
文維が心から感心して褒めると、煜瑾は満足げに微笑み、ドアから見えない右奥の寝台へと移動する。
「スゴイ…」
キングサイズの大きなベッドに、部屋全体の基調であるブルーと相性の良い、エメラルドグリーンの寝具で調えられている。
文維はふと、この色は、煜瑾のお気に入りのベビーイエローのバスローブに合うな、と思った。
文維が一番驚いたのは、これほど大きなベッドに、立派な天蓋が付いていたことだ。こんなに豪華で高級そうなベッドは、各国に旅をして五つ星ホテルのスイートルームもいくつも知っている文維でさえ、見たことが無いと思った。
天蓋の柱には見事な彫刻が成されており、その上に金箔が押されてある。内側の薄い紗のカーテンは白いシルク。重厚な外側のカーテンはピーコックグリーンの上品な物で、まさにクジャクの羽根の柄が地紋に入っている。
手に触れて初めて気付いた文維だが、カーテンはもちろん、枕カバーやシーツまで肌触りの良い最上シルク製品ばかりだ。
「こんなにラグジュアリーな寝室は見たことがありません」
文維の表情から感激していることを察して、煜瑾は褒めてもらいたそうに恋人の顔を覗き込んだ。
「お気に召しました?」
「ええ、もちろん。ただ…」
無邪気に微笑む煜瑾を、艶然と微笑む文維が抱き寄せた。
「ただ…、何ですか?」
初心で、無垢な煜瑾には、文維の官能的な下心など見破ることが出来なかった。
「ただ、このベッドに足りないのは煜瑾だけ…」
甘く響く低音の囁きに、煜瑾は震えた。
「あ!…ぶ、文維!」
煜瑾が気付いた時にはもう遅く、文維は煜瑾を抱きかかえたまま、ベッドに倒れ込んでいた。
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