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第27話
「煜瑾 …、大好きです…。とても、カワイイ…」
文維 は熱い声で繰り返し呟きながら、煜瑾の唇をはじめ、性的に弱い首筋や耳を口づけた。
「あ…、ダメ…ダメですぅ…」
ビクビクと震えながら、煜瑾もまた性感に呑まれそうになった。
「ダメ!文維…誰かが、私たちを呼びに来たら…」
煜瑾の言葉に文維もハッとした。ここには、いつ唐 家の者が現れてもおかしくないのだ。
「あ…あぁ、…そうでした…」
口惜しそうに眉を顰め、唇を噛んだ文維の、苦み走ったイイ男ぶりが、煜瑾をドキリとさせる。
これまで押さえ込んでいた、多くの上海セレブの男女を魅了してきた文維の色気が、近頃は恋人の前で遺憾なく発揮されるようになり、その刺激に煜瑾は翻弄されることが増えた。
「文維っ!」
我慢が出来ずに、煜瑾は自分が引き離した恋人に思い切り抱き付いた。
「ズルいです…、文維。こんなに…、こんなにステキなんて…」
「ん?どうしました、煜瑾」
いつでも、文維は何でも分かっているくせに、とぼけたふりをして煜瑾に言わせようとする。
「文維は…、とっても…その…セクシーで…、私はドキドキします…」
真っ赤になった煜瑾が、恥ずかしそうに文維の胸に顔を埋めてしまった。
「言って下さい…、煜瑾。私が、欲しいって…」
濃艶で、深く、低い声で文維が可愛い恋人を唆すと、煜瑾は身を震わせ、恥ずかしさに首を横に振った。
「いや?」
拒む煜瑾を突き放すように、文維は抱き締めた腕の力を緩めた。手放されるのがイヤで、煜瑾はギュッと文維の服を掴んだ。
「ぶ…文維が…欲しい、です…」
「え?」
小さな声で言った煜瑾に、文維が意地悪く聞き返した。
「文維が!」
「煜瑾坊ちゃま~!」
「!」
思い切って、煜瑾が文維に告白しようとした瞬間、ゲストハウスの階下で、茅 執事が煜瑾を呼ぶ声がした。
2人は顔を見合わせ、苦笑するとベッドから起き上がり、互いの身なりを整えると、手を繋いで階下で待つ執事へと急いだ。
「何ですか、ここはもう文維のお部屋ですよ」
煜瑾が優雅に注意をすると、執事は深く頭を下げた。
「失礼いたしました。ですが、皆さまがあちらで煜瑾坊ちゃまをお待ちです」
「分かりました。私と文維は、あちらのバラ園を通って会場に戻ります」
「承知いたしました」
そう言って、煜瑾と文維は仲良くゲストハウスを後にした。
「ねえ、文維。バラ園を通ってもいいですか?」
「もちろんですよ。でも、どうして?」
不思議そうな文維に、煜瑾は愛らしくふんわりと微笑んだ。
「お母さまに、文維を紹介したいのです」
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