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第35話

「美味しい…。煜瑾(いくきん)はいつでも、私にとっては美味しいデザートです」 「メイン…ディッシュでは、…ない、のですか…?」  荒い息の下から、煜瑾が反論すると、文維(ぶんい)は嬉しそうに笑った。 「メインであり、サブであり、サラダであり、デザートでもある…。これでどうですか?」 「ふふっ。美味しく召し上がって下さい」  煜瑾は、そう言って文維の首に縋り、自分に引き寄せた。 「大好きですよ、煜瑾」  文維は手を伸ばして、ピンクのケーキを指に取ると、ふざけて煜瑾の顎に付けた。 「あ、…ん。文維ったら」  煜瑾が身を竦ませると、文維が追ってケーキを舐め取るように煜瑾の小さな顎を軽く噛んだ。 「くすぐったいです、文維!」 「ふふふっ」  ベッドの上で絡み合いながら、煜瑾はシルクのブラウスを、文維はフランスのブランドのドレスシャツをそれぞれ相手に脱がされた。  素肌を重ね、触れ合い、2人は幸せになる。 「だ、ダメです、文維…」  文維は煜瑾の白い肌に、ピンクのクリームを塗っては舐め取ることを繰り返す。初めは冗談だと笑っていた煜瑾だったが、文維の行為があまりにも性愛的になってきたせいで、ビクリと過敏に震えてしまった。  煜瑾の優しい拒絶を無視して、文維は煜瑾をクリームまみれにして美味しく堪能する。 「もう、…文維、は…、ズルい…で、す…」  官能の波に耐えながら、煜瑾は身をよじらせた。文維は煜瑾の胸や腹にもクリームを塗っては舐めている。 「不思議だな。母のケーキは甘くてとても食べられないのに、こうして煜瑾の肌に触れたものは美味しくていくらでも食べられます」 「あ…、あっ…、」  煜瑾が甘い声をあげ、見悶えると、文維は煜瑾のお臍をテロテロと舐めながら、慣れた手つきで下半身を顕わにしていった。 「い、いや…。お、お仕置き、は…、お仕置きは、しないで…」  文維の唇が下へ、下へと進むにつれ、煜瑾はかつて「お仕置き」と称され、口技を為されたことを思い出し、怯えた。 「怖くない…、怖くないですからね、煜瑾」 「ダメ…、ダメです…、そんなこと…」  不安と、一度知ってしまった快楽との間で、煜瑾は震えていた。 「許して…、文維…。お願い…」  泣き出した煜瑾を可哀想に思わなくもないが、文維は愛し合うことに禁忌(タブー)を作りたくなかった。 「愛しているから、こうするのですよ、煜瑾。…君が好きだから…、君を気持ち()くしたいのです」 「い、イヤっ!ダメです…、文維…。こ、怖い…」  泣きじゃくる煜瑾を優しい愛撫で宥めながら、文維は煜瑾を口に含んだ。 「ダメ…。許して…」

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