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ー 盛夏の候 ⑧ ★
その日の深夜、海人はイリアスの部屋の前に立った。扉を叩くとすぐに開いた。イリアスは人の気配に敏感なので、ノックをする前に開けてくれることもある。
海人は扉が開いたと同時にイリアスの部屋にするりと体を滑り込ませ、扉を閉めた。
戸惑ったイリアスの腕を取ってベッドに行き、押し倒す。
「カイト……⁉」
すぐさま半身を起こしたところに跨 り、キスをした。イリアスがしてくれるみたいに、舌を搦 めて、下唇を吸った。
口を離すと灰色の瞳が見つめてきた。
「どうした……?」
海人は膝立ちしていた腰を下ろし、イリアスの上に座った。
「今日『シルフレイン』でリエンヌさんに会ったよ」
「!」
「昨日は舞踏会だったんでしょ」
心は落ち着いていた。
「ユリウスさんに聞いた」
イリアスはゆっくりまばたきをした。
「カイト、すまない。私は……」
「怒ってないよ。そりゃ、イリアスから女の人の匂いがしたのはショックだったけど……言いたいのはそのことじゃないんだ」
海人は目元を緩める。
「リエンヌさんが、おれはイリアスのものだって言われたって」
ふふと笑って、イリアスの頬を両手で挟んだ。
「すごく、うれしくて」
灰色の瞳が大きくなった。
「だから、ちゃんとイリアスのものにしてよ」
海人は目を逸らさなかった。イリアスはその目を見つめて言う。
「わかった」
イリアスは海人の頭を引き寄せ、熱くて激しいキスをした。海人の半身が反応する。硬くなったところをイリアスに当てて、誘うように腰を揺らしてみた。
いつもより気が大きくなっていた。イリアスの半身もまた、硬くなった。お互いの服を脱がし合うと、覆いかぶさってくる。いつもより体を這う手が荒々しくて、ぞくぞくした。
快感に酔っていると、不意に手が止まった。瞑っていた目を開けると、イリアスが手に何かを塗っていた。小瓶を枕元に置くと、海人の内股に手を這わせた。
「!」
イリアスの長い指が入ってくる。体が固まったが、その手は止まらなかった。ほぐすように動く。イリアスは何度か小瓶の油のようなものを垂らした。その度に指の数が増えていくが、痛くはなかった。
内壁を擦られ、違和感しかなかった後孔から快感が生まれ始める。甘く痺れた。
「……ふ……」
海人が感じて息を吐くと、イリアスはそこばかり攻めてきた。徐々に息が上がってくる。
「ん……」
内壁を押され、開かれ、小さく声が漏れると指が抜かれた。海人がうっすら目を開けると、灰色の瞳は情欲の色を湛えていた。
その色気にクラッときた。イリアスは海人の体を大きく開き、ゆっくり押し入ってきた。イリアスに侵されていく。
そのときー
海人は不思議な感覚に陥っていた。繋がったところから温かな気の奔流が全身を巡った。
魔力を付与する際に詠唱したときに生まれる、第五の霊脈の力。その力が体内に流れていくような感じだった。優しい気の流れに、身を任せたくなる。
イリアスがふっと息を吐いたので、海人は目を開けて、彼の顔を見た。
「あ!」
瞳孔が細くなり、灰色の瞳は琥珀色の竜の瞳になっていた。
海人は手を伸ばし、イリアスの頬を触った。綺麗だった。
「痛くないか?」
心配そうに見下ろしてくる竜の瞳に海人は蕩 けた。ずっと、この瞳に見つめられたかった。
「大丈夫……」
イリアスは伸ばされた海人の手を取り、ベッドに抑えつけた。ゆっくりと腰を動かす。
「ん……ぅ……う……」
馴染ますようにかき回され、時折、小さく声が零れた。嬌声 が漏れるたびに、イリアスは煽られたように、突く。
「……んぁ…!」
ぎゅっと唇を噛むと、イリアスは軽く肩で息をしながら、海人の耳元に口を寄せた。熱い息がかかる。
「カイト」
低く、色香を纏 った声で名を呼ばれ、海人はぞくりとした。
「もっと啼 け」
言うや否や、イリアスは強く突き上げた。
「んあッ!」
体の奥まで届き、堪 らず声が出た。イリアスにしがみつくと、引いた腰をねじ込むように強く打ってくる。
「あッ……あッ……!」
海人は喘いだ。恥ずかしくて漏れないようにしていたが、イリアスが自分の嬌声を聞きたがっているとわかると、感じるままに声を出した。
海人が声を上げるたびに、イリアスは激しく突き上げた。海人の背中に強烈な快感が走り、のけ反った。
「んああッ!」
海人が絶頂に達すると、イリアスもまた息を詰めて、海人の中に熱を放った。
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