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第6話

それから水春の作る曲に、少し変化が起きた。 キャッチーなメロディーに、コード進行も遊び心が増えたのだ。 そして、水春自身にも変化があった。晶の事を知りたがるようになり、どんな些細な事でも聞いてくる。 「付き人になってからずっと、作る曲は却下され続けてて凹んでました。作り方を変えてもダメだし……なら後は何が変わってないかって考えたら、自分自身だって思ったんです。そしたらまた曲を作るのが楽しくなって」 水春は楽屋で真洋とそんな話をしていた。晶ではなく、真洋に話しているのが気になったけれど、良い変化だと思うので放っておく。 (どうやら俺には憧れが強すぎて、照れが出るらしいし) これは真洋から聞いた情報だ。和将も同じような事を言っていたし、初めて会った時もそうだったので、いい加減慣れろと言いたい。 「なぁ、そのうち水春の書いた曲、歌わせてくれよ」 真洋は人好きな笑顔でそんな事を言っている。相変わらず営業モードは人に取り入るのが上手くて、水春に対してタメ口になっている。 「ダメだ。真洋は俺の曲だけ歌ってろ」 真洋が調子に乗って余計な事を言い出した。それを一言で反対すると、真洋は苦笑した。 「……だな。水春の取り分が減るから今のは無しで」 真洋が謝ると、水春は笑って許していた。 すると、水春は何かに気付いてポケットからスマホを取り出した。画面を見て固まっているので、晶はどうした? と声をかける。 「……病院からです。どうしよう、嫌な予感がします」 とりあえず出てみろ、と晶は促すと、部屋の端の方で電話に出た。 水春の表情が固い。晶はそれを見て、和将に連絡した。水春の母親に何かあった時、水春に付いてやってくれと頼んでおいたのだ。 「晶さん、母が…………亡くなりました」 「えっ!?」 真洋が声を上げる。晶は思った通り、嫌な予感が当たったか、と短く息を吐いた。 「とにかくお前は病院に行け。和将を向かわせてるから、手続き関連は奴に任せろ」 水春は完全に表情を無くしていて、酷く動揺しているのが伝わってきた。 水春は両手で顔を覆った。その手が震えている。 「だって……ずっと調子良かったのに……」 そう言って動けない水春に、晶はそっと近付いた。顔を覆った両手を掴んで「顔を見せろ」と手を引くと、青ざめた水春が晶を見つめた。 「とりあえず、何も考えずに病院に向かえ。……一人で行けるか?」 「晶さん…………オレ……」 「良いか、病院に和将がいる。そいつに任せて、早く母親の所へ行ってやれ」 再三、ゆっくり水春に伝えると、ようやく伝わったらしい、水春は楽屋を出ていった。 「真洋」 「ああ、スケジュール調整しとく」 晶は心底、話が早い奴で良かったと思った。晶もスケジュールの調整をして、今日の仕事をこなす。 晶が一日の仕事を終わらせて水春の元へ行けたのは、深夜になってからだった。

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