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第2話 ◆ ウルウと閏

 とはいえ。地球を救うと言ったものの、具体的に何をするんだ――?  飲み物を取ってくる、とそれらしい理由を作って涙目を悟られないよう部屋を出た俺は、落ち着いた頃、冷蔵庫を開けながらふと思った。  冷えたミネラルウォーターと、獣のウルウのためのコップ代わりのボウルとを手に、思案したまま2階の自室へと向かう。  ブラックムーンとかいう悪の組織は、前回のように分かりやすく敵をこちらに放つこともなく、学生に扮しているという。  スパイというくらいだから、どうやったら地球征服ができるか隠密に情報収集をしているのだろうが、回りくどいようにも感じる。  だって、地球人からしたら宇宙人なんてSF世界の住人だ。つまり、そんな未知の存在に対抗しうる力なんてまったく持ち合わせていないのだから、魔法少年である俺の預かり知らぬところで不意打ちで攻め込んでしまえば、地球征服なんて案外簡単にできてしまいそうに思う。  それにほら、宇宙人は皆野蛮ではなかったか。  それとも何か、地球でそう簡単に力を行使できない理由でもあるのだろうか――。  そこまで考えて、俺は自室のドアを開けた。  が、すぐに閉めた。 「………………え?」 「那由多、どうしたの?」  閉めたドアが中から開いて、背けたばかりの現実が不思議そうな声とともに顔を出した。それはとてつもない色気を放ち、人間の姿形をしている。  俺はその姿に釘づけになったまま、どうにか言葉を紡いだ。 「…………ウ、ウルウ……なのか?」 「うん、ウルウだよ。那由多」  あの毛並みと同じ水色をしたセンターパートから少し困った表情を覗かせて、彼は肯定した。惚けた俺の手からペットボトルとボウルを受け取ると、部屋に入るよう優しく促す。 「ごめん、那由多。いきなり人間の姿になってたらびっくりしちゃうよね。僕、ウルウだよ。もう成人したから、獣人にも、人間の姿にもなれるんだ」  ウルウらしいその美少年は、そう言って俺を見つめた。澄んだその瞳は朝焼けみたいな、桃色とも青色とも言い表せられない、あの葵色。 「ウルウ……」  顔立ちの整いすぎた目の前の彼は、間違いなくウルウだった。……ならば。 「服を着てくれ」  そう、ウルウはあろうことか下着1枚姿なのだった。

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