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第1話 ◆ 魔法少年、再び③
地球の征服を企む悪の組織が、学生に扮して諜報活動をしている――。俺はばからしくなって肩の力を抜いた。背もたれに背中を預けて頭をかいてから、ベッドの上に座るウルウを見下ろした。
「ブラックムーンってばかなのか? 高校生に混じってどうやって地球を征服するんだよ」
「ば、ばかなのは那由多だよっ。分かる? 煌輝学園の掌握は日本の掌握と同義なんだよ?! そして地球に存在する星の力を持つ人間――魔法少年は君しかいないんだ。そんな那由多の住む日本に、那由多と同じ学生という形で潜伏している……いい? ブラックムーンの今の狙いは那由多、君だよ。地球征服のためにまずは邪魔な那由多を、殺そうとしているんだ!」
突然の、ウルウの『殺そうとしている』なんて鋭利な言葉に俺は少なからず息を呑んだ。けれどそんなのは束の間、俺は弱ったな……と思い溜息を吐いた。ベッドの上に座るウルウの、動物特有の強く澄んだ眼差しが痛い。
「……ごめんな、ウルウ」
「那由多……!」
「でも俺、もう地球は救えない」
「――え?」
俺はイスから立ち上がって、ウルウの前に立った。6年前、小型犬くらいのサイズだったウルウは今では立派な成獣に成長していた。けど、撫で心地のよさそうな水色の毛並みは相変わらず綺麗で、そのキツネのような太いしっぽと大きな三角の耳は、俺の言葉を聞き逃さまいとピンと立てられていた。俺は覚悟を決めると、一息に捲し立てた。
「俺はもう、あんな小っ恥ずかしいことしないからな!! だいたい魔法少女ならともかく魔法少年ってなんだよ?! めちゃくちゃ恥ずかしいだろ! 確かに小学生の時の俺はさ? 自分で言うのも何だけどさ? めちゃくちゃかわいい美少年だったさ! だけど俺はもう高校生なのっ! あんなショートパンツにおへそが見えそうなノースリーブ、極めつけはエポレットにひらひらのマントが付いた派手なコスチュームなんかに変身してキラキラ魔法使って、無垢な心で一生懸命悪党たちをやっつけるなんてもう無理だからっ!! 地球救う前に俺が恥ずか死ぬからっ!!」
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