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第1話 ◆ 魔法少年、再び④
しかし、そんな俺にウルウはあろうことか食い下がった。
「恥ずかしくないよ! 今でも那由多はかわいいもん!!」
「何言ってんだウルウ?! どう見てもかわいくはないだろ! だいたいお前もだよっ。もう16歳なんだから“もん“とか言っちゃダメなんだってば!」
「駄目じゃないもん! ぐるるぅ~~!」
そんなふうに肩で息をし合った俺たちだったが、互いにそんなことをしてもしょうがないという気になって、黙り込んだ。それに、別に俺はウルウに怒っているわけではないのだ。だから、怒鳴ったりして申し訳ないなと思った。
急速に冷静になっていった俺は、今度はもっと奥にある、本当の自分の気持ちを吐き出した。
「……あのさ、ウルウ。俺もう、地球とか救いたいほど心キレイじゃないから。いいんだよね俺、別にブラックムーンに殺されたって」
「那由多……?」
「家族とか友だちとか……もういろいろ疲れちゃったんだ。ウルウが棲むシャイニスを救えたことは、俺も本当に良かったと思ってるよ。けど地球は……救わなきゃよかったって思ってる。こんな辛い思いするなら、地球なんて無くなっちゃえばよかったんだ」
言いながら俺は、自分の言葉に自分で納得していた。誰にも言って来なかった暗い気持ちが、次から次へと口を突く。
「俺さ、頭も良くないし顔も良くないし得意なことも自慢できるものも何も無い。挙句の果てに……“普通“にもなれなくて、本当に嫌なんだ。こんな自分のことなんてもうどうでもいい。気にしたり隠したり、恐れたり恥ずかしくなったり本当にろくでもなくて邪魔。……地球も俺も、どうでもいい」
そこまで言った時、突然ウルウが襲い掛かってきた。
大きな獣の前脚で肩を押され、ただでさえひ弱な俺は驚きも相まって簡単にベッドに組み敷かれてしまった。
何をするんだ、という気持ちで顔を上げた俺はぞくりとした。成長してもまるで大型犬のような、優しく可愛らしい印象のウルウだったけど。こんなふうに怒って目の前で牙を見せつけられると、恐ろしいオスの獣なんだなと思い知らされたのだ。
「なんでそんなこと言うの那由多っ!!」
そしてそんな恐ろしいオスの獣は――動物のくせにぼろぼろと泣き出した。
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