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第2話 ◆ ウルウと閏④

 俺は複雑な気持ちになって黙り込んだ。  ウルウの「会いたい」と思ってくれていた気持ちが強く伝わってきたうれしさとか、ウルウが自分の意志は二の次でいいと言ったことへの悲しさとか、自分がこれまでのウルウの苦労も知らずにわがままを思った恥ずかしさとか。そんなのが綯交ぜ(ないまぜ)になって、何を言ったらいいのか分からなくなってしまう。 「ウルウ――」 「まあでもとにかく、今はこうやって那由多と同じ学園に通えることになって僕はすごくうれしいんだ! 那由多、また一緒に頑張ろうねっ」 「へ?」  今、ウルウは何と言った? 同じ学園……だと? 「ちょっ、どういう――」 「よし! 粗方のことは話したし、記念すべき煌輝学園への転入に備えて今日はもう寝よう。明日は始発に乗るから、早起きだよ那由多っ」  「張り切ってこー!」と勝手に盛り上がっているウルウの横で、俺は今度は別の意味で何から言ったらいいのか分からなくなってしまう。  ちょっと待ってくれ……俺、煌輝学園に転校するの? しかも明日?! 聞いてない!  ……魔法少年は大変なのだ。 * * * 「那由多、起きて?」 「う……んん……。ぅる、う……?」 「うん、ウルウだよ。おはよう那由多」  肩を優しく叩かれてゆっくりと目を開けると、そこには朝から胸焼けしそうなほどの、ものすごい美顔が迫っていた。  水色のまつ毛に縁取られた葵色の瞳は、まだ少し眠たげに、やわらかく細められている。……というか。 「……なんで同じベッドで寝てるんだよ」 「やっぱり昔みたいに一緒に寝たくなっちゃったんだもの。今日くらいいいでしょ?」  そう言ってニコッと笑ったウルウは、起き抜けの鼻にかかったセクシーな声も相まって、まだ日の出前の朝から破壊級の眩しさを放っていた。  恥ずかしくなって目を逸らすのと朝が劇的に弱いのとで再びシーツに潜り込むと、出ていた脚に何かふわふわとしたものが触れた。

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