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訊ねているのに、返事は求めていない。
求めていたとしても、それは【肯定】と【同意】だけ。
カナタはそれでも、懸命に言葉を探した。
この異常な男を相手に、自分だけは真っ当でいなくてはならないのだから。
──そうでなくては、自分がどうなってしまうのかが分からない。
『見せてよ、カナちゃん。俺まだ、カナちゃんの裸見てない。……それともカナちゃんは、俺にだけ肌を晒せって言いたいの? もしかして意外と積極的なのかな、カナちゃんって』
『そんな、つもりじゃ……っ』
『大丈夫だよ、カナちゃん。裸になったって、カナちゃんは可愛いから』
カナタはいつも、隠れて女装をしていた。
家族にすら、自分の好みや趣味を教えなかったのだ。
それは、否定を恐れたから。
辛辣な言葉を浴びせられると、恐怖したからだ。
しかし、ツカサはどうだろう?
言動はどうあれ、カナタのことを肯定している。
むしろ、カナタが望む以上の反応を与えてくれた。
そして、なにより……。
──ずっと、誰かに『可愛い』と言われたかったのだと。
カナタはようやく、気付いたのだ。
言葉を失っていると、ツカサがそっとカナタの肩を押した。
その事実に気付いた瞬間。
『ツカ、サ……さん……っ?』
──カナタはツカサの手によって、ベッドへと押し倒されていた。
肩を押していたはずの手が、カナタの服へと差し込まれる。
『なに、を……っ』
カナタが慌てたところで、ツカサの動きが止まるはずはない。
ツカサの手はそのまま、カナタの素肌を撫で始めたのだから。
『スベスベしていて、気持ちいい。……ヤッパリ、なにも恥ずかしがることなんてないよ』
『やっ、やだ、なんで──あ、っ!』
『服、上げるよ?』
宣言通り、ツカサはカナタが着ていた服を捲り上げる。
天井から注ぐ明かりに照らされながら、カナタの上半身はツカサの視界に捉えられた。
『カナちゃん、首まで赤くなっているね。可愛いなぁ、ホントに』
『そんなに、見ないでください……っ』
『俺はカナちゃんになら見られたっていいよ? だから、俺にも見せてよ。……俺の裸、いっぱい見てもいいからさ』
反射的に、カナタはツカサの体を見る。
カナタとは違い、男らしく逞しい体。
服を着ていると詳しくは分からなかったが、ツカサは鍛えているのだろうか。こうして見ると、筋肉の形がしっかりと分かってしまった。
『……っ』
思わず、カナタはツカサの体に見惚れる。
すると、ツカサがくすりと可笑しそうに笑った。
『ホラ。カナちゃんだって、俺の裸じっくり見てるじゃん? 自分が見られるのは嫌がったくせに、人のは見たいなんて……カナちゃんはエッチだね』
『ちっ、ちが──』
『モチロン、責めているワケじゃないよ? そんなカナちゃんも可愛いねって話だからさ』
そう言いながら、ツカサは笑みを浮かべる。
そして、突然。
『う、そ……っ! だめっ、待ってください、ツカサさん……っ!』
──ツカサの手が、カナタの下半身へと伸びた。
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