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1 : 10 微*
突然の出来事に、カナタは戸惑う。
しかしツカサは、まるで『カナタの方が異常だ』とでも言いたげな様子で、小首を傾げる。
『だって、脱がないと着替えられないじゃん』
『そうだとしても、今は──』
カナタの抵抗も虚しく。
『大丈夫、恥ずかしくないよ』
ツカサは迷うことなく、カナタのズボンをずり下ろした。
その瞬間。
『……あ~、なるほどね~?』
ツカサが神妙そうに、数回頷いた。
カナタは羞恥心を抑えきれず、両腕で自身の顔を隠す。
『だから、ダメって言ったのに……っ! ツカサさんの、意地悪……酷い、です……っ!』
腕の下で、カナタは涙を溢れさせた。
それもそのはずで……。
──下着の中で、カナタの逸物は反応していたのだ。
誰かに見せるようなものでもない、生理現象。
有無を言わさず露呈させられた羞恥に、カナタが耐えられるはずがない。
カナタは、性経験が皆無だった。
そんな中、相手が同性であったとしても突然迫られ、ベッドに押し倒された挙句に服を剥がれ、素肌をまさぐられたのだ。
性に多感な年頃のカナタが反応するのも、仕方がないだろう。
数秒前まで饒舌だったツカサも、黙り込んでいる。
まるでそれらの現状全てが、カナタを責めているようだった。
恥ずかしさのあまり、カナタはポロポロと泣き始める。
しかし、みっともない姿をこれ以上は見せまいと、カナタは嗚咽を噛み殺した。
その時だ。
『──や、あ……っ!』
カナタがビクリと、体を震わせたのは。
慌てて、カナタは下半身へと視線を落とす。
自分でも驚くような声が出た原因が、下半身へ与えられた違和感だったからだ。
そして、カナタは愕然とした。
──ツカサが、カナタの下半身へ顔を埋めているのだから。
『な、なんで、なに──ん、ぅ……っ! や、やだ、いやです、ツカサさん……っ!』
しかも、ツカサが顔を埋めているのは前ではない。
──後ろなのだ。
自分でも弄ったことのない場所に、なにかがねじ込まれている。
推察するに、ツカサの舌だろう。
『や、だ……っ! やだ、やめ──んっ、ぁあ、は……っ!』
生温かい舌が、後孔を嬲っている。
初めての感覚に、カナタはなす術もなく翻弄された。
『そんなところ、舐めないで……っ! ゾワゾワ、して……へ、変な、気持ちに……っ』
唾液によって生まれる、淫猥な音。
それらが鼓膜を揺さ振るたび、カナタは艶めかしい声を上げてしまった。
数分間、ツカサはただ、カナタの後孔を嬲り続ける。
『んっ、ひ……っ! や、だ……やだ、いやです、いや……っ!』
そしてカナタはただ、嬌声に似た声を上げ続けた。
そうすると、ツカサが顔を上げる。
『お尻の穴も可愛いね、カナちゃん』
ようやく離れてくれたかと思えば、ツカサが口にしたのはそんな言葉。
カナタは乱れた呼吸のまま、ツカサに情けない視線を向けてしまった。
『お、終わり……です、か……っ?』
『うん、終わり。舌で舐めたら、カナちゃんが嫌がるんだもん』
ホッと胸を撫で下ろし、カナタは天井を見上げる。
けれど、すぐに……。
『──じゃあ、次は本番をシよっか』
カナタの視線は、ツカサへと戻された。
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