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1 : 11 微*
言われている意味が分からないほど、カナタは無知ではない。
……否。
本当は、分かりたくなんてなかったのだ。
しかし、理解せざるを得ない。
──ツカサの隆起した逸物が、カナタの後孔へ押しつけられているのだから。
『ま、待って……っ! オレ、やだ……そんなこと、したくない……っ!』
どうして、こんなことになってしまったのか。
すぐにでも、スカートを穿いて見せたら良かったのではと。カナタは、どうしようもないことを考え始める。
けれど、ツカサは一度だって。
──カナタのことを、待ってはくれなかった。
『カナちゃん可愛いから、他の人に盗られたくないんだよ。だから、ね? カナちゃんのヴァージン、俺にちょうだい?』
先端が、後孔に擦りつけられる。
カナタは何度も何度も、首を横に振った。
すると、その気持ちが届いたのだろうか。
『……俺が相手じゃ、イヤ?』
ツカサが、身を引いたのだ。
しょんぼりと、まるで捨てられた犬のような目をしながら。
『カナちゃん、俺のこと嫌い? 俺とはシたくない? セックスは俺以外の人とするつもりなの?』
まるで、被害者のような表情だ。
どう見ても、被害者はカナタだというのに……。
決してカナタは、ツカサのことが嫌いなのではない。
……ただ。
『恋人じゃないのに、こんなこと……するの、おかしいです……っ』
カナタは、純情だった。
キスも、それ以上のことも……。
そういった行為は全て【特別な人】とするもの。
そして、自分もそうした相手と関係を築いていくのだと、信じていたのだ。
ツカサのことが、嫌いなわけではない。
ただ、そういった行為をする相手として見ていないのだ。
すると、ツカサは小首を傾げた。
『──なにを言っているの? 初めて会ったあの日から、カナちゃんは俺の恋人でしょ?』
そんな言葉を、口にしながら。
『目が合ったから、俺はカナちゃんのものになった。握手に応じてくれたから、カナちゃんも俺のものになった。こうして部屋にだって入れてくれるし、裸だって見せ合える。……なら、恋人だよ。なにもおかしなことなんてない』
『……は、っ? なにを、言って……っ?』
『もしかして、だけどさ? 俺以上にカナちゃんを大事にできる人がいるって、カナちゃんはそう思っているの? そんなワケないよね?』
──笑顔だ。
──今度は、笑顔を浮かべたではないか。
『俺はカナちゃんを大切にするし、優しくする。カナちゃんは誰にも見せたことがないスカート姿を、俺にだけなら見せてくれようとした。……ホラ、ヤッパリ。俺たちは【特別同士】で【恋人】だ。まったく、やめてよカナちゃん。こんな時に焦らせるなんて、意地が悪いなぁ?』
『ち、違います……っ! オレは、ツカサさんと付き合ってない……っ!』
『じゃあ、今すぐ俺と付き合って』
ぐっ、と。
ツカサの逸物が再度、カナタの後孔へと押しつけられた。
『カナちゃんが俺の恋人になってくれるなら、優しくする。酷いことはしないよ、約束する。……だけど、カナちゃんが俺と付き合えないなら。俺以外の誰かを選ぶなら……』
『……選ぶ、なら……?』
どこまでも。
『──裏切り者のカナちゃんを殺して、俺も死ぬ。そして、地獄で俺と付き合おう』
──どこまでも、ツカサは笑顔だった。
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