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 語尾に『当然でしょう?』と付きそうなほど、迷いのない答えだ。  こんなもの、もはや選択肢でもなんでもなかった。 『カナちゃん、返事を聴かせて? 俺の恋人になってくれる?』  にこやかに微笑むツカサが、心底恐ろしい。  ほんの数秒前までは、優しくて素敵な青年だったはずなのに……。 『俺を選んで恋人になって、今日からこの世界で俺と幸せになるか。俺を選ばないで殺されて、地獄で俺と幸せになるか』  ツカサの冷たい手が、カナタの首に添えられる。 『──選んで、カナちゃん』  これでもう、カナタは逃げられない。  カナタに用意された【選択肢】は、ふたつ。  けれど。  ──与えられた【選択】は、ひとつだけなのだから。 『──こ、い……びと、に……なり、ます……っ。なります、から……怖いこと、しないで……くだ、さい……っ』  大粒の涙を零しながら、カナタは懇願するようにツカサを見つめた。  体は震え、奥歯もガチガチと音を立てている。  カナタが思い描いていた【恋人】という関係性とは、あまりに縁遠い現実。  こんなものは、愛や恋といった単語とはまったく違う。  それでも、カナタは泣きじゃくりながらでも、ツカサに縋るしかないのだ。  たった数秒で、カナタの生殺与奪権はツカサに掌握されてしまったのだから。  恋人になれと迫った相手が──カナタが、泣いている。  それなのに、ツカサは……。 『ホント……っ? カナちゃん、俺のものになってくれるのっ? 絶対に? 約束してくれる?』 『は、い……っ』 『ウソ、ホントに……っ? ……ヤッタ……っ! うわっ、凄く嬉しい……っ! ありがとう、カナちゃんっ!』  ──無邪気に、笑ったのだ。  まるで、さっきまでとは別人のように。 『カナちゃんは今日から俺の恋人だよ! だから、俺もカナちゃんの恋人だ! あはっ! 今日は記念日だね、カナちゃんっ!』  子供のようにはしゃぐツカサを微笑ましい心持ちで見るなんてこと、カナタには不可能だ。  カナタはツカサに対して、どう振る舞っていいのか分からなかった。  瞳から溢れるカナタの涙が見えていないのか、ツカサはどこか狂気に満ちた目をしながらカナタに詰め寄る。 『それじゃあ、セックスしてもいいよね? 恋人なんだもんね? カナちゃんは俺の恋人だから、なにも問題ないんだよね?』  飛躍し続ける話に対し、カナタは必死に首を横に振った。 『やっ、それは──』 『優しくするから安心してね、カナちゃんっ』  ツカサはきちんと、カナタの言葉を聴いている。  聴いているからこそ、こうして段階を踏んでカナタと行為に及ぼうとしているのだ。  しかしそれは、カナタの価値観とは全く違う。  ──結局これは、強姦と大差ないのだ。 『んっ、ぅ……あ、ぁ……っ!』  身をよじっても、逃げようとしても。  ツカサは絶対に、カナタを離さない。 『挿れるよ、カナちゃん。だから、暴れないでね?』  ──ゆっくりと逸物を挿入されれば、カナタはどうしたって逃げられないのだ。  抵抗をすれば、なにをされるか分からない。  つい先ほど、カナタは無邪気に脅されたばかりなのだ。  首に指が這い、殺されかけたばかりなのだから。  だというのに、脅した張本人であるツカサはというと……。 『──嬉しいなぁ……っ。カナちゃんのヴァージン、俺が貰っちゃった……っ』  至極幸福そうに、笑みをこぼしていた。

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