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 大仰な態度でカナタを振り返ったツカサは、ぐっと距離を詰める。 「焦らせないでよっ! ビックリしたなぁっ! と言うか、そういうことは事前に言ってもらわないと困るよっ! 俺、お義母様になにも準備してないっ! それはダメだよ、大人としてっ!」  思わず、気圧されてしまう。  それほどまでに、ツカサの圧は凄い。  目をぱちぱちと瞬かせるカナタを見て、ツカサはすぐにハッとする。 「あっ、ご、ごめんね、カナちゃん! 怒ってないからね? 可愛いカナちゃんに怒ったりなんかしないからね、ごめんね!」 「えっと、あの、は、はい……っ?」 「って、これ以上待たせるのは良くないよね! ……よしっ! せっかくだし、俺が接客するよ! むしろ、俺にさせてっ!」 「えっ? あの、ツカサさんっ?」 「行ってきます!」  嵐のような勢いで、ツカサが厨房から出てきた。  そのままカナタの戸惑いを気にすることなく、カナタの母親が待つ席へと向かう。  そっと、カナタはマスターへ目を向けた。 「ツカサさん、どうかしたのでしょうか?」 「そうじゃのう……。むしろ、今からどうかするのではなかろうか」 「『今から』?」  マスターはなぜか、諦めに似たような目をツカサへ向けている。  カナタもマスターに続き、ツカサへ目を向けた。  すると、店員が近付いてきたと気付いたカナタの母親が、メニュー表から顔を上げる。 「あぁ、カナタ。実はお母さん、朝ご飯をまだ食べていなくて──あら?」 「いらっしゃいませ、お義母様」  視線の先にいたのは、息子ではない。  そのことに驚いた母親は一度、どこか戸惑ったような声を上げた。  しかし、すぐに母親は表情を変える。 「いつもカナちゃんにはお世話になっております」  眉目秀麗な青年が、目の前に立っていた。  そして、たとえ愛想だとしても笑みを浮かべているのだ。 「えっ、っと……っ?」  こうして顔を赤らめながら、母親が戸惑うのは当然だろう。  ツカサの服装と、言葉。  それらを頭の中で情報として消化した母親は、ポンと手を叩いた。 「もしかして、カナタの同僚さんですか? はじめまして、カナタの母です」 「はじめまして。ツカサ・ホムラです」 「ホムラさんね。こちらこそ、いつもカナタがお世話になっています」  二人の会話を盗み聞きしながら、カナタは小首を傾げる。  いったいマスターは、これからなにが起こると危惧しているのか。  だがその疑問は、即座に解決するのであった。 「実は、カナちゃんのご両親にお会いできたら訊きたいことがあったんですよ」  冷水が入ったコップをテーブルの上に置き、ツカサは微笑む。  人の好さそうなその笑みに、カナタの母親も笑みを返した。 「まぁ、そうなのですね。なんでも訊いてください」 「ありがとうございます」  ツカサが相槌を打った、その瞬間。 「──カナちゃんって、産まれた時は何グラムだったんですか?」  カナタは慌てて、厨房からホールへと駆け出した。

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