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 腰を打ち付けられる音が、店内に響く。  日中は客が来店し、マスターとツカサの料理を楽しんでいる店内で。  時には忙しなく、時にはのんびりと仕事をしている店内が。 「あっ、ぁあ、っ! んっ、んぁ、あっ!」  今では、恋人たちの愛の巣となっていた。  カナタは涙を流しながら、ツカサから与えられる快感にただただ声を上げることしかできない。 「カナちゃん、ごめんね。勘違いして、イヤなことをさせてごめん……っ」 「ツカサさ──んっ、んぅ、っ」  振り返ると、貪られるようなキスが向けられる。  後ろにいるのは、先ほどまでの恐ろしいツカサではない。  カナタが懐き、カナタが守りたいと思った優しいツカサだ。 「ツカサさん……っ、ツカサ、さん……っ」  カナタはツカサの後頭部へ手を伸ばし、懸命にキスを強請る。  ツカサは欠片も迷うことなく、カナタの唇にキスを落とした。  カナタのくぐもった声が、店内に響く。  機嫌を直した【どころではない】様子のツカサが、カナタの弱いところを何度も何度も突き上げるからだ。 「ふぁっ、あんっ! やっ、ツカサさっ、あぁ……っ!」  ツカサのことを、怖いとは思った。  ……しかし、以前とは確実に違う。  不思議とカナタは、初めて脅された時のような拒絶を抱かなかった。  その理由に、おそらくカナタはもう気付いてもいい頃合いなのかもしれない。  それでも、今のカナタにはそんなことが考えられなかった。 「ツカサさんっ、オレ、そんなに激しくされたら……っ!」  恋人からの熱烈な求めに応えることで、精一杯なのだから。  近付く絶頂に、カナタは体を震わせた。 「イく、イっちゃ……っ! はっ、ふぁあっ!」  あられもないカナタの喘ぎ声と共に、壁へ向かって白濁とした液が迸る。  大胆に後孔を締め付けて、カナタは無意識のうちにツカサの絶頂を促す。  まるでカナタに求められたツカサが、拒むことをしないと知っているかのように。 「ツカサさんの、精液……あつ、いぃ……っ」  深々と挿入されたツカサの男根が、カナタの後孔へ劣情を注ぐ。  内側でビクビクと震えるツカサの逸物を、カナタは甘えるように締め付けてしまう。 「カナちゃん、ダメだよ……っ。締め付けすぎ、だから……っ」 「ふぁ、あ……っ!」 「こんなに締め付けられたら、一回だけじゃ満足できなくなっちゃう……っ」  困ったように眉を寄せるツカサを振り返って、カナタは涙に濡れた瞳を向ける。  そして、耳まで赤くなりながら……。 「──『欲しがって』って言ったのは、ツカサさんだから……っ」  ガラにもない破廉恥なことを、カナタは思わず口にしてしまった。  その言葉は、ツカサにとっては予想外で。 「カナちゃんの、小悪魔……っ」  ツカサにとっては、なによりも効力のある【おねだり】だった。

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