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 ベッドに押し倒されたカナタは、自身に覆いかぶさるツカサを見上げた。 「待って、ちが……っ! こういう、意味じゃ……っ」 「『こういう意味』ってなに? 俺はただ、可愛いカナちゃんに覆いかぶさっているだけだよ?」 「っ!」  こうして質問ばかりしてくるツカサは、妙なスイッチが入っている。  こうなったツカサは、満足のいく答えが出てくるまで、カナタを解放しない。 「教えて、カナちゃん。カナちゃんの答えが、俺の答えだから」  そんな優しい言葉を連ねるくせに、結局は誘導をするのだ。  カナタは顔を赤くして、ツカサを見上げた。  しかし、ツカサは微笑むだけで解放はしない。 「そんなに可愛く見上げてもダメだよ。俺、分からないことはそのままにしておけないタイプだから」 「意地が悪いです……っ」 「あはっ。秘密主義のカナちゃんの方がイジワルだと思うけどなぁ?」  ツカサの手が、カナタの太ももを布越しに撫でる。  カナタは小さく体を震わせて、ツカサの手から逃れようと身をよじった。 「やだ、ツカサさん……っ。手つき、が……っ」 「さっきカナちゃんが俺の腕にくっついてきたのだって、こんな感じじゃなかった?」 「全然違います……っ!」  すると、ツカサの親指がズボンに引っ掛けられる。 「同じだよ。だって俺はさっき、今のカナちゃんと同じ気持ちになったから」  そのまま、ツカサはカナタのズボンをゆっくりと下ろす。 「カナちゃんに触れられて、俺は凄くドキドキしたよ」  膝の辺りまでズボンを下げられ、カナタは驚く。  カナタが慌てて両手で下半身を隠すと、ツカサは小さく笑った。 「これは、男同士のちょっとしたじゃれ合い? それとも、別のなにか? ……ねぇ、カナちゃんはどう思う?」 「……っ」 「カナちゃんの答え通りに動くよ。カナちゃんが思う通りに、俺は振る舞う。俺はカナちゃんの恋人で、カナちゃんは俺の恋人だからね」  顔が近付き、互いの鼻先が触れ合う。 「言って、カナちゃん。これから俺とカナちゃんは、ベッドの上でいったいなにをするの?」  ──お喋り、と。  そう言えば、ツカサはそう振る舞ってくれるのだろう。  けれど、カナタはもう……。 「……わ、て……っ」  ──ツカサの瞳から、逃げられなくなっていた。 「もっと、触ってください……っ。ツカサさん、と……恥ずかしいこと、したいです……っ」  カナタの答えを聴き、ツカサは優しく微笑む。  笑みを浮かべるツカサの手によって、膝の辺りで引っかかっていたカナタのズボンが、ゆっくりと最後まで下ろされた。 「素直なカナちゃんは、可愛くていい子だね。本当に、俺の恋人は世界で一番可愛いよ」  降り注がれる『可愛い』という言葉に、カナタの理性は溶かされていく。  口付けられると、文句を紡ごうという意思すら飲み込まれて。  カナタはただ、目の前にいる美丈夫に囚われるしかなかった。

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