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5 : 6 微*
ニーハイソックスを穿いたカナタは、どうしていいのか分からずに視線を彷徨わせた。
ツカサはと言うと、楽し気な瞳をカナタの下半身へ向けている状態だ。
「ヤッパリカナちゃんは、ニーハイも似合うねっ」
無邪気に笑うツカサは、お世辞ではなく本心からそう思っているのだろう。
その証拠にツカサの手は、ずっとカナタの脚を撫でていた。
「俺、今まで【絶対領域】って言うの? そういうのに興味とかなかったんだけど……うん。カナちゃんのは『いいな』って思う。すっごく性的」
ジッとカナタの下半身を見下ろしたまま、ツカサは感慨深げに頷く。
「これって、下着を脱がせたら意味ないのかな? 見えない部分と見えている太もものコントラストって言うか、そういうのがいいんだよね、きっと。……ねぇ、カナちゃんはどう思う?」
「っ!」
恥骨の辺りに、ツカサの指が触れる。
息を呑んだカナタを見下ろして、ツカサは小さく笑みをこぼした。
「あはっ。どうしたの、カナちゃん? 物欲しそうな目をしているね」
悔しいことに、ツカサの指摘は正しい。中途半端に熱を持たされて、カナタの体は疼いているのだ。
──持て余した熱を、放出したい。
そんな直球すぎる性的欲求が、カナタの思考を埋め尽くしていた。
「ツカサさん、早く……っ」
ゆっくりと、脚を開く。
しかしツカサは、カナタの下穿きを剥ぎ取ろうとはしなかった。
それどころか、予想外のことを口にしたのだ。
「──一応言っておくけど、今日はセックスしないよ?」
ツカサの言葉に、カナタは明らかな【落胆】を表情に浮かべる。
そんなカナタの表情に気付いていながら、ツカサは眉を寄せた。
「明日は楽しみにしていたデートだよ? 万全の状態で挑みたいじゃん?」
「でも……っ」
「それとも、カナちゃんは中途半端なコンディションで俺とデートをしたいのかな?」
意地の悪い訊き方に、カナタは首を横に振る。むしろ、そうするしか選択肢はなかった。
……だが、それでは困る。
カナタの体は既に、ツカサから快感を与えてもらうことだけを期待しているのだから。
これでは、羞恥心を押し殺してまでツカサに強請った自分が、ただただ空回りをしただけだ。
「ツカサさん、お願いします……っ。このままじゃ、辛いです……っ」
恥骨に這うツカサの手を握り、カナタは懇願する。
そうすると、ツカサが嬉しそうに笑った。
「可愛いけど、ダメ。セックスは明日のデートが終わるまで我慢だよ」
「そんな……っ」
「だけど、このまま『はい、おやすみなさい』って言うのも可哀想だよね。カナちゃんのココ、濡れてきちゃってるのにさ」
「ん、ぅ……っ!」
下着越しに、カナタの逸物をツカサが撫でる。
先端を指先で軽く触れられるだけで、カナタは自分でも恥ずかしくなるほど期待に満ちた吐息を漏らしてしまった。
素直な反応を示すカナタを見て、ツカサが突然ポンと手を打つ。
「それじゃあ、疑似セックスをしよっか」
言葉とは裏腹に、ツカサの表情はどこまでも無邪気なものだった。
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