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 ツカサのことは、好きだ。  しかし、ツカサへの気持ちが【そういう好き】なのかどうか。……それはいったい、どうすれば分かるのだろう。  チラリと、カナタは目線をツカサへ送る。  すると意外にも、ツカサとはすぐに目が合った。  なぜならツカサは、ずっとカナタのことを見つめていたのだから。 「ラテアート、飲みにくい?」  けれど、ツカサはカナタがなにを考えているのかまでは、見透かせていないらしい。  ウサギが浮かぶカップを見つめるカナタは、ラテアートに対して深刻な表情を向けていた。  そう、ツカサは解釈しているのだから。 「いっそ、俺が混ぜてあげよっか? グチャグチャ~って」 「それは絶対に嫌です!」 「あっははっ! それじゃあ、頑張って飲まなくちゃだね?」  そう言って笑うツカサは、どこまでも楽しそうで。  ……どういうところがかは、分からない。  けれど、少なくともツカサはカナタのことが好きなのだろう。  可愛いものを見てはしゃぐカナタを見て、ツカサははしゃいでいる。  それは、ツカサがカナタのことを好きだから。  カナタはそう、理解しているつもりだった。  ──しかし。 「……っ?」  不意に、言葉にはできない引っ掛かりを、カナタは静かに抱く。  胸には確かに、妙な塊がある。  それなのにカナタは、その正体が分からない。 「カナちゃん?」 「えっ?」 「表情暗いけど、大丈夫?」 「あっ、えっと……」  けれど、その原因と理由に。 「はい、大丈夫です。いただきます」  カナタは現時点で、気付けなかった。  * * *  それからカナタは、ツカサに色々な場所を案内してもらった。  若い女の子や子供に人気の、有名な雑貨屋。これは言わずもがな、カナタが可愛い物を好むからだ。  次に、マスターの知り合いが経営しているコーヒーショップにも行った。  これはカナタが『コーヒーの勉強をして、マスターさんの手助けをしたい』と言ったから用意された目的地だ。  その後は、可愛い服が揃っているけれどあまり有名ではない穴場のような服屋へ。  カナタにとってはさすがに恥ずかしかったが、それは普段と変わらないツカサの手腕によって、半ば強引に入店。  そして、日が傾いてきた頃……。 「カナちゃん、今日は楽しかった?」  最初に行った場所とは違うカフェの、テラス席。  そこでツカサは、眩いほどの笑みをカナタへ向けていた。  笑みを向けられたカナタはと言うと……。 「たっ、楽しかった……で、す……っ」  ──真っ青になって、俯いていた。  それもそのはずで……。 「俺も楽しかったよ! 俺、いつかカナちゃんの服をトータルコーディネートしたいって思っていたからさ! 今日買った服、着たら俺に見せてね? 約束だよ? ねっ、カナちゃん?」 「いつか、きっと、はい……」  このカフェへ来る前に立ち寄った店──つまり、服屋にて。  ──カナタはされるがまま、ツカサに色々な服を試着させられたのだ。  まるで着せ替え人形のような扱いを受けたカナタは当然、疲弊。  表情や姿勢から、ぐったりと疲れ切った様をアピールしていた。

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