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ツカサが、心底嬉しそうに笑っている。
それもそのはずで、なぜならツカサの目の前には、カナタが座っているのだ。
──そう。
──タオルをベッドの上へ落とした、バニーガール姿のカナタが。
「凄くエッチだよカナちゃんっ! うわ~っ、メチャクチャ可愛いっ!」
「そう、ですか……っ?」
「うん、マジでマジで! あっ、耳も付けてもいい? カチューシャみたいになってるんだけどさ!」
「は、はい……っ」
先ほどまでのしおらしさが嘘のように、ツカサはいそいそとカナタへ近寄った。
カナタの頭に、ツカサはコスプレ衣装の付け耳を装着させる。
「ヤッパリ、ラテアートのウサギよりもバニーガールなカナちゃんの方が可愛いよっ! 写真撮っていいっ? いいよねっ! ハイ、ピースっ!」
「やっ、待って! オレ、撮っていいなんて言ってないです! ちょっと、ツカサさん!」
スマートフォンのカメラを向けたツカサ相手に、カナタは反論しようとした。
しかし、暴走し始めたツカサは止まらない。
「もう撮っちゃった。ごめんね? 嫌いにならないで?」
「やだ、消して──んっ」
文句を紡ぐカナタの口を、ツカサは自身の口で塞ぐ。
「ぁ、ん……ふ、っ」
キスをしながら、ツカサがカナタの体を布越しに撫でた。
ゾワゾワと、言葉には形容しがたい感覚が、カナタの体を這う。
ツカサからのキスを受け止めながら、カナタは瞳を閉じる。
──恥ずかしい。
そう思うと同時に、カナタは考える。
──だが、ツカサが喜んでくれているのは嬉しい、と。
オマケに、他の誰でもないツカサから『可愛い』と褒められるのならば、カナタは羞恥心を飲み込めてしまう。
キスから解放されると、カナタはすぐさまベッドへ押し倒される。
すると、ツカサがなにかに気付いたような顔をした。
「あっ。カナちゃん、ヘアピン外すね?」
前髪に、ツカサの手が触れる。
せっかくのプレゼントを、外したくはない。
そう思ったカナタは、悲し気に眉尻を下げる。
「どうして、ですか?」
カナタの問いに対し、ツカサはサラリと答えた。
「スポーツをするときにヘアピンは危険だって、両親から言われなかった? ケガしちゃうかもしれないでしょう?」
即座に、カナタは顔を赤くする。
「スポーツ、って……っ。オ、オレ……親の前ではヘアピンとか、したことないです……っ」
「そうなの? じゃあ、ヘアピンヴァージンも俺が貰っちゃった感じかな? ふふっ、幸せっ」
羞恥心を煽るような言葉選びに、カナタはますます頬を朱色に染めた。
だがカナタは決して、ツカサがヘアピンを外す手を止めはしない。その手は、ツカサの優しさだからだ。
「よし、準備完了! ウサギさんなカナちゃんのこと、今から食べちゃうね?」
「その言い方……なんか、嫌です……っ。恥ずかしい、から……っ」
「でも、ココは嬉しそうだよ~?」
ツカサはそう言い、カナタの下半身へと手を伸ばした。
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