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5 : 20 微*
ツカサの指先が、カナタの下半身を這う。
「ココ、少しだけど盛り上がっちゃってるね? エッチな服に興奮しちゃった?」
「違い、ます……っ」
「じゃあ、なんで? どうしてカナちゃんは勃起しているのかな~?」
薄い布越しに、ツカサはカナタの男根を撫でる。
好きな相手から施される、微弱な愛撫。
しかも、相手はカナタの体をカナタ以上に熟知している男だ。
カナタは観念しつつも、ツカサから目を逸らした。
「…………か、ら」
「聞こえな~い。カナちゃん、もう一回~」
「……キ……キス、されて……嬉し、かったから……っ」
興奮してしまった理由を、カナタは素直に告白する。
そうすると、なぜか。
──ツカサの手が、動きを止めた。
「止ま、って……っ? なん、で……っ? あの、ツカサさん?」
微弱ながらも確実に与えられていた快感がなくなり、カナタは恐る恐るツカサを見上げる。
そして、カナタは目を丸くした。
「そんな、素直に言ってくれると思わなかったから……っ。さすがにちょっと、照れちゃった……っ」
贔屓目を抜いても、ツカサの容貌は魅力的だ。それは今日のデートで、ツカサが道行く人々の視線を奪っていたことが証拠。
そんな、端整な顔立ちの青年が……。
──カナタの言葉に、赤面している。
「わ……っ。赤くなってるツカサさんの顔、初めて見たかもしれません」
思わず、カナタはツカサの顔を凝視した。
するとどうやら、カナタの視線に気付いたらしい。
ツカサが赤面しながら、カナタのことを見つめたのだ。
「いっつも、俺には『見ないで』って言うくせに、今日はやけに見てくるんだね?」
「だって、ツカサさんの顔が赤いから。少し、珍しくて」
「自分のはイヤがるのに? そんな意地悪なウサギさんには、人間サマがお仕置きしてあげる」
赤らんだ顔のまま、ツカサはカナタの下半身へ手を伸ばす。
その手で、ツカサはカナタの脚を持ち上げる。
そして……カナタの脚を、迷うことなく舐め始めた。
「や、だ……ん、っ!」
小さく、カナタが身震いをする。
拒絶の言葉を紡いでも、ツカサは止まらなかった。
「俺ね、カナちゃんのことならなんでも知ってるよ? たとえば……カナちゃんは女の子の服を着るとき、肌は極力出したくないタイプだってこととか」
「っ!」
ツカサの指摘に、カナタは息を呑んだ。
その反応は、無言の肯定としてツカサに受け止められる。
「それは【恥ずかしい】からじゃない。カナちゃんの骨格が【男】だから。自分の体のせいで、可愛い服を損ねちゃうって思っているから。だから、スカートを穿くときはストッキングよりもタイツ派。可愛いデザインの二―ソックスがあるなら、スカートの丈を長くする。……そうでしょう?」
「それは、そう、ですけど……っ」
「だからこそカナちゃんは、バニーガールの服を本当は着たくなかった。脚とか肩とかが丸見えになっちゃうから。……だよね、カナちゃん?」
ふくらはぎに歯を立てて、ツカサはカナタのことを見つめた。
まるで、なにもかもを見透かすように……。
カナタは赤面しながら、小さく頷く。
どんな嘘も、今のツカサには見破られてしまうと。
そう、直感したからだ。
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