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カナタの素直な言葉に、リンは眩いほどの笑みを浮かべる。
「だよね、だよねっ! くぅっ、生でボーイズのラブが見られるなんて、僕ってばツイてる~っ!」
まるで、長年探していた秘宝を見つけ出したトレジャーハンターのようだ。
大はしゃぎするリンを見ていると、打ち明けるのは早計だったかと思えてくる。
だがどちらにせよ、隠し通すことはできなかっただろう。
リンはカナタと距離を詰め、キラキラと輝く瞳を向けた。
「僕、本当に人の恋バナが大好きなんだよ! 僕が就職じゃなくて進学を選んだのだって、社会人より学生の方が恋バナ発生率高いかな~って思ったからだし、喫茶店をバイト先に選んだのだってそういう理由! ……まぁ、店員がマスターを含めて四人しかいないっていうのには驚いたけど、こんなに極上の恋バナがあるなら大正解だよねっ!」
なんて不純な動機で進学をしているのだろうと、カナタは思うことすらできない。
それほどまでに、リンの勢いが強いからだ。
「ねぇねぇ、二人はどういう関係なの? 両想い? 両片想い? それとも、カナタ君の片想いかな~っ?」
「あの、リン君──」
「でも、好きになったら厄介そうな人を好きになっちゃったんだね~? だってホムラさんって、カッコいいから引く手あまたって感じじゃん? 見た目チャラいし、結構遊んでそう。浮気の心配とか──」
「──そっ、それは違うよっ!」
思わず、カナタは声を張る。
気弱で大人しそうなカナタの怒声に、リンは思わず言葉を詰まらせた。
「ツカサさんはそんな人じゃない! 見た目で判断しないで!」
リンが、輝いていた瞳を丸くしている。
その姿に気付き、カナタは慌ててリンから距離を取った。
「あっ、ご、ごめん! いきなり、怒鳴っちゃって……っ」
「いや、僕の方こそ……嫌な言い方して、ごめん」
カナタと同様に、リンも反省をしている様子だ。
頬を掻き、リンはどことなく気まずそうな表情を浮かべている。
「ちょっと、テンション上げすぎちゃった。本当にごめんね?」
慌てて、カナタは首を横に振った。『気にしないでほしい』という意思表示だ。
カナタが怒っていないと理解したリンは、すぐにまた人懐っこい笑みを浮かべる。
「でも、ちょっとビックリした! カナタ君って、自分の意見をハッキリ言えないタイプの人だと思ってたからさ! なんか、カッコいいね!」
リンの言葉に、カナタは自分でも驚く。
確かに、今まではなかなか自分の意見を真っ直ぐと言えなかった。
それなのに、ツカサが誤解されていると思っただけで、自分でも驚くほど感情的になってしまったのだ。
それでも、カナタは……。
「……オレは、全然ダメだよ。カッコ良くなんて、ない」
拳を握り、堪らず俯く。
ツカサがカナタのことをどう思っているのか、確認する勇気すらも奮い立たせられない。
そんなカナタは、当然……。
「──オレは全然、カッコ良くなんてないよ」
胸を張って自分の考えを言えるツカサの方が、断然輝いている。
そんなツカサだから憧れ、そんなツカサだからこそ惹かれた。
ツカサのことが好きだと打ち明けるまで、こんなにも沢山の不安要素を羅列してしまう自分が、カッコいいわけがない。
カナタの呟きを、どう受け取ったのか。
リンはただ、不思議そうに小首を傾げていた。
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