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カナタが、変わった先。
その先にあるのは、カナタがツカサ以外の誰かを選ぶという未来。
そこにツカサがいるかどうかなんて、愚問に決まっていた。
「いるとか、いないとかじゃないよ。カナちゃんが、俺を置いて行くんだ。カナちゃんが、俺を連れて行かないんじゃないか」
冷えた指が、徐々にぬるい体温へと変わっていく。
カナタの首が持つ体温を、少しずつ奪っているから。
それほどまでにハッキリと、カナタの首を掴んでいるのだ。
死を感じながらも、カナタは言葉を続ける。
「ツカサさんは、オレが変わると嫌なんですか?」
「そうだよ、イヤだ。カナちゃんが変わるのなら、俺は裏切り者のカナちゃんを殺す。俺から背を向けた方向にある【先】なんて、絶対に与えてやらない。カナちゃんは、俺と幸せになるんだから」
カナタが【変わる】ということは、ツカサとの運命を否定することとイコールになると。
ツカサのそんな主張が、カナタにも通じたのだろう。
カナタは口を開き、一度、閉じる。
そして再度、カナタは口を開いた。
「……それじゃあ」
──別れましょう。
そう言われることを、ツカサは直感的に覚悟する。
即座に、ツカサはカナタの首を力任せに絞め上げようとした。
しかし……。
「──ツカサさんが『嫌だな』って思わない方法を、一緒に考えませんか?」
続くカナタの言葉は、ツカサにとっては予想外のものだった。
ビクリと、ツカサの体が震える。
それは、カナタの言葉に驚いたからではない。
「オレは、変わりたいです。だけど、ツカサさんに嫌われたくないです。でも、だからといってどちらかを諦めるつもりはありません。……だから、どっちも叶えられる方法を、一緒に考えてくれませんか?」
カナタの眼差しに、自分が映っていると気付いたから。
──カナタの目が、真っ直ぐとツカサだけを映していたからだ。
「オレは今、自分で選んだからここにいます。ツカサさんを好きになって、脅されたって理由じゃなく本心から恋人になって、そして今、ツカサさんとの未来に胸を弾ませています。今の自分になれたのは、ツカサさんのおかげです。オレを変えてくれた、ツカサさんのおかげなんです」
こんなにも、カナタは真っ直ぐな目をしていただろうか、と。
「だから、大丈夫ですよ。これからもオレは、自分で選べます。……オレはずっと、ツカサさんを選び続けますから」
こんなにも、カナタは強い男だったのか。
恋人の首に両手を添えながら、ツカサは漠然とそんなことを考えた。
同じところまで落ちてきてくれないのならば、引きずり落とす。
そうした覚悟を持って、ツカサはカナタと接してきた。
けれど、カナタは違う。
「ツカサさんが嫌なことは、なんですか? 本当に、オレが変わることが嫌なんですか?」
──カナタは【ツカサの手を引き、同じところまで引き上げよう】としてくれていた。
カナタの手が、首に添えられたツカサの手に触れる。
その手が、あまりにも優しくて。
その手が、あまりにも愛おしかったから。
「……カナちゃんが、俺以外の人を好きになるかもしれない……っ。俺はそれが、イヤだ……っ」
ツカサは素直に、自分の気持ちを口にした。
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