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 ──まさか、ツカサと浴室でセックスをする日が二度もくるとは。  カナタはつい数分前まで、考えてもいなかった。 「んん、あ……っ! は、ぁ……っ」  内側に、ツカサの肉棒が押し入ってくる。  それと共に、まるで便乗するように浴槽のお湯までもが……。  二度目の感覚と言えど、慣れるはずもない。  カナタは戸惑ったような色を含ませつつ、甘い声を漏らした。 「カナちゃん、苦しくない? 大丈夫?」  優しく問いかけるツカサに、カナタは一生懸命、縦に頷く。  ツカサの劣情が、カナタを犯している。  しかもこんな、本来ならば性交に使わないような場所で……。  カナタは懸命にツカサへしがみつき、快楽と羞恥に耐える。 「ナカ、凄い締め付け……っ。嬉しいのかな? それとも、気持ちいい?」 「どっち、も……っ」 「まだ挿れただけなのに? でも、素直なカナちゃんもエッチで可愛いよ」  囁きながら、ツカサはカナタの後頭部を撫でた。  挿れただけだというのに、はしたなく感じてしまっている。  普段のカナタならば絶対に肯定しない言葉だったけれど、今日のカナタは違う。  ツカサと離れていた時間が、想像よりも精神的に参っていたらしく……。 「ツカサ、さん……っ。動いて、ください……っ」  らしくない言葉たちが、次から次へと溢れて仕方ない。 「オレ……ツカサさんが、ほしいです……っ」  それでも、止めようとは思えなかった。  当たり前のように在るものが、当り前じゃないと知って。  たかが数時間離れていただけだというのに、予想以上に寂しかった。  そばにいてくれるだけで、こんなにも胸が温まる。  そして相手が、自分と同じくらいの愛情を持ってくれているのだ。 「我慢、できません……っ。ツカサ、さん……っ」  だからこそカナタは、自分の気持ちを吐露することができる。  そして、そんなツカサが相手だからこそ……。 「はっ、あ……っ! んっ、んぅ……っ!」  カナタはどこまでも、浅ましい自分を晒すことができた。  浴槽に満ちていた湯が、ユラユラと揺らめき始める。  それは、ツカサが動いたからではない。 「あっ、ぁあ、っ! んっ、は……あぅ、んっ!」  ──カナタが自ら、腰を振り始めたからだ。  耳まで赤くなるほど恥じらっているというのに、カナタは自分の行動を止めようとは思わない。  ツカサにしがみついたまま、カナタは何度も腰を振る。  尻を上げて、ゆっくりと落とす。  そしてまたゆっくりと尻を上げ、また落としての繰り返し。  不慣れ且つ、湯の中という動きづらい状況。  それでもカナタは、懸命に体を揺らし続けた。 「気持ち、いぃ……っ! ……ツカサさん、好きっ、大好きです……っ!」  パシャパシャと、何度も湯が跳ねる音。  あまりにも、カナタらしくない行動。  決して激しくはない動きだが、それがどこかカナタらしい。  自らの意思で動くカナタを見て、ツカサは瞳を細める。 「上手に動けて偉いね、カナちゃん」  そんな、甘く優しい言葉を添えて。  ツカサはカナタの頭を撫でながら、満足そうに囁く。 「嬉しいなぁ。カナちゃんが自分から、俺のをほしがってくれるなんて」 「んっ! あぁ、っ!」 「あはっ、可愛い。自分で気持ちいいところに当ててるの、俺には分かるよ? カナちゃんって本当に、そこを突かれるの好きだよね?」 「ひっ、あ、っ! んあっ、あ……っ! ……す、好き、好きです……っ、好き、ぃ……っ!」  優しくされると、堪らなく満たされてしまう。  カナタはツカサの耳元で、何度も『好き』という言葉をこぼした。

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