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 ビクビクと、カナタの体が何度も震える。  射精を伴わない絶頂を繰り返すカナタを見つめて、ツカサは目を細めた。 「何度もナカでイくカナちゃん、凄く可愛い……っ。メチャクチャ興奮する」 「はっ、あ……ん、ぁ!」 「汗と涙と涎で、俺の枕を汚していいよ。カナちゃんのことが好きすぎて、それすらも嬉しくて興奮するから」  生理的な涙を溢れさせながら、カナタは自身を犯すツカサを見上げる。  瞳を細めるツカサの頬にも、汗が伝っていた。それは興奮からか、行為からか、あるいは両方が理由だろう。  煽情的なツカサの姿を見つめて、カナタは思わずツカサの枕をより一層強く抱き締めてしまった。  ……そこでふと、カナタは気付く。ここはツカサの部屋で、ツカサのベッドの上で、抱いているのはツカサの枕なのだと。  部屋は当然、ツカサの匂いが溢れている。ベッドの上はより一層、それを強く感じられる気がした。  そして極めつけに、鼻にも押し付けられているツカサの枕。……鼻腔をくすぐり満たすその匂いに、カナタは今さらながら気付いてしまったのだ。  カナタがそのことに気付くと、ほぼ同時。不意にツカサが、眉を寄せたのだ。 「……ン? カナちゃんのナカ、また締まった。どうかした?」 「あっ、いえ──んぁ、っ!」 「隠し事は悲しいなぁ。だから、ねっ? 教えて?」  わざと強く、弱いところを攻められる。そうされるとカナタは冷静に物事を判断できなくなり、ツカサから求められることに従属するしかないのだ。 「ツカサさんのっ、ツカサさんの匂いがいっぱいで……っ! だから、いつものエッチより、ドキドキしちゃって……っ」 「確か、前もそんなことを言っていたよね? カナちゃんはホント、俺のことが大好きなんだね?」 「大好き、です。……駄目、ですか?」 「まさか。嬉しいよ。俺はずっと、カナちゃんからの好意が欲しいからね」  出会った頃から、カナタはツカサから『好き』という言葉を告げるよう求められていた。  それを始めは脅威的なものとして受け止めていたのに、今では求められなくても応じている。実に、感慨深い。そう、思えてくるほどだ。  ツカサはカナタの後頭部に手を回し、そのまま額をコツンと重ね合わせた。 「カナちゃん、そろそろ出したい。カナちゃんのナカで、射精したい」 「……っ」 「ナカ出ししても、いい?」  この目は、カナタがなんと答えるのか分かっている目だ。もしくは、カナタの答えを強制的にひとつへと絞らせる目だろう。  ツカサの暗い瞳に見つめられたカナタは、潤んだ瞳をそっと伏せる。そのまま、不意に……。 「ナカに、出してください……っ」  カナタはそう言い、枕をベッドの上へ放った。  ツカサが一瞬だけ目を丸くするが、すぐにその目は見えなくなる。カナタが瞳を閉じ、ツカサの唇に自身の唇を押し付けたからだ。  キスによって口を塞いだカナタは、後孔の奥に押し付けられるツカサの熱に体を震わせる。  カナタからのいじらしい行為に、丸くなっていたツカサの瞳も閉じられた。 「んっ、んぅ……っ!」  口腔に舌を挿入され、そのまま舌が絡み合う。カナタはくぐもった声を出しながら、ツカサの背に腕を回した。  そうすると、ツカサの腰遣いもより一層激しさを増す。カナタの声ではなくベッドの軋む音が聞こえてしまうのではと、心配になるほどに。  それから、しばらくして……。 「──んんぅっ!」  ツカサの逸物から、熱い飛沫が後孔へと注がれる。  その感覚に導かれたカナタもまた、白濁とした液を迸らせるのであった。

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