187 / 289
10 : 11 *
ビクビクと、カナタの体が何度も震える。
射精を伴わない絶頂を繰り返すカナタを見つめて、ツカサは目を細めた。
「何度もナカでイくカナちゃん、凄く可愛い……っ。メチャクチャ興奮する」
「はっ、あ……ん、ぁ!」
「汗と涙と涎で、俺の枕を汚していいよ。カナちゃんのことが好きすぎて、それすらも嬉しくて興奮するから」
生理的な涙を溢れさせながら、カナタは自身を犯すツカサを見上げる。
瞳を細めるツカサの頬にも、汗が伝っていた。それは興奮からか、行為からか、あるいは両方が理由だろう。
煽情的なツカサの姿を見つめて、カナタは思わずツカサの枕をより一層強く抱き締めてしまった。
……そこでふと、カナタは気付く。ここはツカサの部屋で、ツカサのベッドの上で、抱いているのはツカサの枕なのだと。
部屋は当然、ツカサの匂いが溢れている。ベッドの上はより一層、それを強く感じられる気がした。
そして極めつけに、鼻にも押し付けられているツカサの枕。……鼻腔をくすぐり満たすその匂いに、カナタは今さらながら気付いてしまったのだ。
カナタがそのことに気付くと、ほぼ同時。不意にツカサが、眉を寄せたのだ。
「……ン? カナちゃんのナカ、また締まった。どうかした?」
「あっ、いえ──んぁ、っ!」
「隠し事は悲しいなぁ。だから、ねっ? 教えて?」
わざと強く、弱いところを攻められる。そうされるとカナタは冷静に物事を判断できなくなり、ツカサから求められることに従属するしかないのだ。
「ツカサさんのっ、ツカサさんの匂いがいっぱいで……っ! だから、いつものエッチより、ドキドキしちゃって……っ」
「確か、前もそんなことを言っていたよね? カナちゃんはホント、俺のことが大好きなんだね?」
「大好き、です。……駄目、ですか?」
「まさか。嬉しいよ。俺はずっと、カナちゃんからの好意が欲しいからね」
出会った頃から、カナタはツカサから『好き』という言葉を告げるよう求められていた。
それを始めは脅威的なものとして受け止めていたのに、今では求められなくても応じている。実に、感慨深い。そう、思えてくるほどだ。
ツカサはカナタの後頭部に手を回し、そのまま額をコツンと重ね合わせた。
「カナちゃん、そろそろ出したい。カナちゃんのナカで、射精したい」
「……っ」
「ナカ出ししても、いい?」
この目は、カナタがなんと答えるのか分かっている目だ。もしくは、カナタの答えを強制的にひとつへと絞らせる目だろう。
ツカサの暗い瞳に見つめられたカナタは、潤んだ瞳をそっと伏せる。そのまま、不意に……。
「ナカに、出してください……っ」
カナタはそう言い、枕をベッドの上へ放った。
ツカサが一瞬だけ目を丸くするが、すぐにその目は見えなくなる。カナタが瞳を閉じ、ツカサの唇に自身の唇を押し付けたからだ。
キスによって口を塞いだカナタは、後孔の奥に押し付けられるツカサの熱に体を震わせる。
カナタからのいじらしい行為に、丸くなっていたツカサの瞳も閉じられた。
「んっ、んぅ……っ!」
口腔に舌を挿入され、そのまま舌が絡み合う。カナタはくぐもった声を出しながら、ツカサの背に腕を回した。
そうすると、ツカサの腰遣いもより一層激しさを増す。カナタの声ではなくベッドの軋む音が聞こえてしまうのではと、心配になるほどに。
それから、しばらくして……。
「──んんぅっ!」
ツカサの逸物から、熱い飛沫が後孔へと注がれる。
その感覚に導かれたカナタもまた、白濁とした液を迸らせるのであった。
ともだちにシェアしよう!