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 カナタの服をゆっくりと脱がしながら、ツカサは微笑む。 「俺がカナちゃんを甘やかすから、カナちゃんは俺を甘やかして?」  以前までのツカサなら、カナタを甘やかすことしかしなかっただろう。  しかし今は、カナタに甘えるという選択肢を視野に入れた。視野にあるその道を選択することに、躊躇を見せなくなったのだ。  カナタは小さく笑って、ツカサを見上げる。 「素直に甘えてくれるツカサさんは、なんて言うか……可愛くて、好きです」 「やった。カナちゃんに『好き』って言ってもらえたっ」 「んっ」  お礼かのようにキスを贈った後、ツカサは慣れた手つきでカナタを脱がし始めた。  ……が、ふと。ツカサは手の動きを止める。 「どうしよっか、カナちゃん? このままだと、ペンちゃんにカナちゃんのいやらしいところ……ぜぇ~んぶ見られちゃうね?」  ペンギンのぬいぐるみの顔が、カナタとツカサに向けられている。  ツカサの物言いが理由の大半を占めているが、カナタはペンギンのぬいぐるみから注がれている視線に気付き、顔をボボッと赤くした。 「あっ、えっと。……ペンちゃん、ひっくり返してください……っ」 「ん、分かったよ」  オーダー通り、ツカサはぬいぐるみに手を伸ばす。そのままツカサは、ペンギンのぬいぐるみの顔をベッドではなく、壁に向けた。 「相変わらず、恥ずかしがり屋さんだね?」 「ツカサさんが、変な言い方するから……っ」 「あははっ、ごめんねっ? なぜかカナちゃんには、ついつい意地悪を言っちゃうよ」  カナタを脱がした後、ツカサは自分の指をペロリと舐める。 「お詫びに、ここから意地悪はナシ。優しくしてあげる」  濡れた指が、カナタの後孔を這う。何度も味わったその感覚に、カナタの体と心はすぐに期待感を示し始める。 「可愛いなぁ、カナちゃん。お尻の穴、物欲しそうにキュウッてしてる」 「あ、う……っ」 「指を挿れると、嬉しそうに締め付けてくれるね。嬉しいなぁ……っ」  ぐりっ、と。ツカサの指はすぐさま、カナタの弱いポイントを突き始める。  指先ひとつで快感を刺激されて、カナタは吐息を漏らしてしまった。 「やっ、そこ……っ」 「うん、ココ。カナちゃんの好きなところだね」 「はぅ、ん……っ!」  二本目の指も難なく受け入れつつ、カナタは与えられる快楽に没頭する。 「カナちゃんの、勃っちゃったね? お尻でこんなに感じてくれて、俺は嬉しいよ」 「や、ぁ……っ。意地悪しないって、言ったのに……っ」 「今のは意地悪だったかな? そんなつもりじゃなかったけど、ごめんね?」 「あ、っ! あっ、謝りながら指っ、増やさないでください……っ!」  真っ赤になったカナタを見つめて、ツカサは満足そうに笑っていた。 「今日は後ろからシたいな。カナちゃんの背中、頼り甲斐があって好きなんだ。だから、今日は背中を眺めていたい。……いい?」 「『駄目?』じゃなくて、そう訊くんですね……っ」 「カナちゃんに『いいよ』って言われたいんだもんっ」  悪びれずに答えられると、カナタはなにも言えなくなる。 「……いい、ですよ」 「やった。だから好きだよ、カナちゃん」 「むぅ。絆されているような……」  それでも唇を尖らせて、カナタはまるで甘やかすように、ツカサの提案を快諾した。

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