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家に帰ると当然、カナタとツカサ以外は誰もいない。家主であるマスターもウメも、仕事中だからだ。
二人はそのままツカサの部屋へと向かい、ベッドの上で今、互いの体温を唇から感じ合っていた。
「カナちゃん、好きだよ。昨日より、もっと。今朝よりももっと、キミが好き」
「ツカサ君……っ」
「これから、二人きりのときは俺に敬語を遣わないで喋ってね? それで周りに人がいるときは、今まで通りでいてほしいな。敬語を抜いた特別なカナちゃんは、俺だけのものにしたいから」
「うん、分かった。ツカサ君がそう言うなら、そうする。……オレも、そうしたいから」
服を脱がされながら、カナタは熱に浮かされたような瞳でツカサを見上げる。
昨晩は後ろから抱かれたが、今は向かい合っているのだ。ツカサのことが好きで堪らないカナタは、その顔を見つめていたかった。
すぐにツカサは手を動かし、カナタの後孔に触れる。
「んっ、ぅ、ぁあ……ッ」
「カナちゃんのナカ、時間が経つとキツイね。……痛くない?」
「だい、じょうぶ……っ。だから、焦らすのはやだ……っ」
「ヤッパリ、今日のカナちゃんは積極的だね。双方の親に挨拶したし、これで憂いなく結婚できるから、嬉しいのかな。……ちなみに、俺は凄く嬉しいよ」
嘘は、言っていないのだろう。ツカサは幸福そうに笑いながら、徐々に乱れていくカナタを眺めていた。
「俺たちが【恋人】でいられるのは、あと少しだね。もうすぐ、俺たちは結婚して【家族】になるんだ。……幸せだなぁ、本当に」
「あっ、んぅ……っ!」
「そう考えると、なんだかいつもと行為に対する気持ちが変わってくる気がするよ。不思議と今日は、いつもよりもっと特別な気持ち。カナちゃんも同じだと嬉しいな」
カナタの後孔を解しながら、ツカサは静かに言葉を紡ぐ。
「愛しているよ、カナちゃん。これから先もずっと、俺はカナちゃんだけを愛してる」
「ツカサ、くん……っ」
指を引き抜き、ツカサは隆起した自身の逸物をカナタの後孔に押し付ける。
「ドキドキする。……なんでだろうね、初めてってワケじゃないのに」
「オレも……オレも、いつもよりドキドキする……っ」
「そうなの? だったら、このドキドキもステキなもののように感じるよ。……もとから、不快ではなかったしね」
「あ、ぁ……あ、ん、ッ」
押し付けられていた逸物の先端が、ゆっくりとカナタの内側へと挿入されていく。
愛する人に愛され、心だけではなく体も満たされていく感覚。カナタは堪らず甘い声を漏らし、ツカサの背に手を回した。
「今、初めてシた時のことを思い出したよ。カナちゃん、あの時も可愛かったなぁ」
「初めての、時は……ツカサ君、怖かった……っ」
「前もそう言ってたね。でも、仕方ないよ。だって、カナちゃんのことが凄く特別だったから『早く俺だけの男の子にしたい』って、焦っちゃったんだもん」
ケロッとした様子で答えるツカサは、全くもって申し訳なさがなさそうだ。
「でも、結果的に俺は間違えていなかった。こうして今、俺の腕の中にカナちゃんがいる。それが、過去の俺を肯定する決定的な証拠だよ」
「そんなの、結果論だもん……。オレ、本当に怖かったんだよ……っ?」
「今も?」
至近距離に、ツカサの顔がある。
「今も、俺は怖い?」
暗い瞳には、カナタの顔が映し出されていた。
ツカサの瞳に映るカナタの表情は、とても……。
「……ずる、い。今のツカサ君、オレが『怖くない』って言うのを分かっているような顔だよ……っ」
とても、怯えているようには見えなかった。
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