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最終章 : 7
可愛がられたくない、なんて。そんなもの、本心からの言葉ではない。子供のようなワガママによって構成された、偽りと嘘だ。
本当は。カナタはいつからか、ツカサにいつまでも……。
──誰よりも『可愛がってほしい』と、思うようになっていたのだから。
ツカサからの真っ直ぐな言葉を受けて、カナタの頬が赤くなる。いくら求めていた言葉だとしても、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。なんとも面倒な反応だとカナタ自身も思うが、こればかりはどうにもできなかった。
「あはっ、顔が真っ赤。……欲しい言葉だったのに、いざ言われると恥ずかしいの? それとも、おねだりしちゃったことに恥ずかしがってる?」
「両方、です……っ」
「敬語に戻っちゃうくらいドキドキしてるのかな? ホント、可愛いなぁ」
熱を帯びる頬に、ツカサの手が添えられる、普段と変わらず冷えているその手に、カナタは自身の頬を擦り寄せた。
「ツカサ君からの気持ちは、正直に言うと驚くこともいっぱいあったよ。今でもきっと、オレはツカサ君の全部を分かってあげられていないとも思う」
過激で、強引で、乱暴で。ツカサから向けられた愛情は決して、優しくて甘いものだけではなかった。
「だけど、それでもオレはツカサ君が好き。ずっとずっと、大好きだよ」
これからも、ツカサからの愛に驚くことはあるだろう。……だが、それでも構わない。
何度そうした出来事が起こっても、カナタはツカサの気持ちを受け止めると決めて、応えると決めたのだから。
「だから、えっと。……ツカサ君にとっても、オレがそういう人なら……嬉しい、な」
むしろ、カナタ以外にそうした相手がツカサにできてしまったら。きっと──確実に、カナタは耐えられないだろう。
しょぼんと自信なさげに縮こまるカナタを見て、ツカサはクスリと可笑しそうに笑った。
「カナちゃん以上に優しくて、強くて。ステキで可愛い子なんて、どこにもいないよ。少なくとも、俺にとってはカナちゃんが最高の男だから」
「本当に? 嘘じゃ、ない?」
「ウソを言うような男に見える?」
「……見えない」
「あははっ! ありがとう、カナちゃんっ」
今度は嬉しそうに笑いながら、ツカサはカナタの体に腕を回す。
「そう言えば、思い立ってすぐに結婚しちゃったからひとつだけ失敗したことがあるんだよね。俺、今カナちゃんのためにウエディングドレスを作ってるんだけど、実はまだ完成してないんだ」
「えっ?」
「ごめんね、ガッカリしたよね? だけど、もうほとんど完成に近くて──」
「──えっと、違うよっ? 驚いたのは【ウエディングドレスを手作りしている】って方にだよ?」
「──えっ? なんで?」
その返しにこそ、カナタは『なんで』と言いたくなった。好きな相手のためにウエディングドレスを作る男なんて、少なくともカナタは聞いたことがない。
ツカサは不思議そうにしているが、どうやらなにか思いついたらしい。
「そうだっ! ねぇ、カナちゃん? ウエディングドレスを作るために、カナちゃんの体のサイズを俺の手で測らせてくれない?」
「でもツカサ君、さっき『もうほとんど完成に近い』って──」
「よいしょっと」
「わわっ!」
カナタの体に回していた腕に力を入れて、ツカサはカナタの体を強引に引き寄せた。
やはり、結婚してもなにも変わらない。予想外の言動ばかりなツカサに驚きつつも、カナタは大人しくツカサの上に乗った。
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