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オマケ②【そんなに上手にならないで】 1

 ※二人の関係性は八章の後くらいです。  ※多少ネタバレを含みますので、八章を読了後にお読みいただくことを推奨いたします!  今晩も変わらず、ツカサはカナタの部屋にやって来ていた。 「今日もお仕事お疲れ様っ。働くカナちゃんも可愛いけど、こうして部屋でまったりしているカナちゃんも可愛いね。抱き締めてもいいかな?」  安定の溺愛ぶりを発揮しながら、ツカサは両腕を広げる。  断る理由は、どこにもない。カナタは頬を赤らめつつ、ツカサからの提案に対し頷きで応じた。 「ただ抱き締められるだけなのに、それでもカナちゃんはこんなに意識してくれるんだね。嬉しいなぁ」  上機嫌さをさらにレベルアップさせつつ、ツカサはカナタを正面から抱き締める。 「カナちゃん、好きだよ」  囁いた後、ツカサはカナタの顎に指を添えた。  ──キスを、される。すぐにカナタは、次に贈られる好意に気付く。 「んっ」  始めに、まるで挨拶のような触れる程度のキス。それから、次は『今日も愛しているよ』と言いたげに、啄むようなキスを。  すぐに、カナタの口腔にツカサの舌が差し込まれる。カナタは閉じていたまぶたに思わずさらなる力を増やしてしまいながらも、必死にツカサからのキスに応じた。  唇が離れ、まぶたを上げた二人の瞳に、互いが映る。 「カナちゃんって、キス好きだよね。目がトロンとしていて、可愛い」 「そう言うツカサさんだって、キス……好きじゃ、ないですか」 「可愛い反撃だね? だけど、俺の答えは決まっているよ。……好きだよ、カナちゃんとのキスが」 「っ! ……ズルい、です」  カナタ、惨敗。サラリと本音を告げたツカサから、カナタはそっと顔を背けた。  ツカサはよく、カナタにキスを贈る。逆に、カナタからのキスを求めることも多かった。  しかしいつも、カナタはツカサのペースに呑まれてしまう。カナタから始めたキスだとしても、最終的にはツカサが主導権を握っているのだ。  それは、なぜなのか。依然としてツカサから顔を背けつつ、カナタは考える。  ……そしてすぐに、その答えを見つけた。 「ねぇ、カナちゃん? そろそろこっちを向いてくれない? ……まだ恥ずかしい? それとも、焦らし? カナちゃんからのプレイなら俺はなんでも受け止めるつもりだけど、顔が見られないのは寂しいなぁ」 「……あの、ツカサさん」 「あっ、やっと俺を見てくれた。なぁに、カナちゃん?」  カナタがその瞳にツカサを映しただけだというのに、ツカサは心底嬉しそうだ。ニコニコと口角を上げながら、カナタの頬を優しく撫でている。 「なんでも訊いて? 俺、カナちゃんに知られて困ることなんてないから、なんでも答えるよ? 今日の下着の色だって教えられるからね?」 「そ、れは……っ。……そうじゃ、なくてっ。それは今、知りたいことではないと言いますか──」 「確かに、もうちょっとしたら見せ合うもんね。……ベッドの上で、さ?」 「~っ! ……もうっ! ツカサさんっ、オレのこと揶揄うの禁止ですっ!」 「ええぇっ! 揶揄ってなんかいないのにっ!」  ガンとショックを受けつつ、ツカサは大袈裟なほど衝撃を受けていた。  カナタが頬を膨らませると、落ち込んでいたツカサは眉尻を下げつつ、カナタの頬をつつき始める。  ……全く、反省していない。なぜならツカサ個人の意見としては悪いことを一切しておらず、ただ正直にカナタとの【その後】に想いを馳せただけなのだから。  そうと分かっている手前、カナタはツカサのことを強く非難できないのであった。

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