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② : 5
ツカサのように、キスが上達したのかは分からない。
だが、そうした枠組みの中で右往左往している間はきっと、カナタはツカサに同じものを返せないのだと。ツカサからの説明で、カナタは理解できたような気がした。
……それでも『固執しないのか?』と問われると、答えは未だに同じだが。
「でも、もっともっと上達したいです。それでいつか、ツカサさんから出てくる言葉が『可愛い』じゃなくて、思わず『気持ちいい』って言っちゃうような。そんなキスができるように、精進しますっ!」
「努力家なところも可愛いねっ。じゃあ、次は俺の練習に付き合って?」
「はいっ! ……はいっ?」
──刹那。
「──俺も【キスの練習】をカナちゃんの唇でしたいなぁ。……モチロン、いいよねっ?」
──流れが、完全にツカサに迎合したではないか。
「えっ? あのっ、ツカサさん──あっ!」
「逃げちゃダメだよ、カナちゃん?」
「逃げるとか、そういう意味じゃなくて……っ! なっ、なんで服の中に手を入れるんですかっ?」
「キスをするときは体を触っちゃいけないなんてルール、誰が決めたの?」
「そんな屁理屈──んっ」
まるで、それ以上の言葉は聞きたくないと。一分一秒も無駄にしたくないと訴えるよう、ツカサはカナタの唇を塞ぐ。
「んっ、ぅ……っ! あっ、ツカサさん……っ」
「もっといっぱい、キスをしよう? 俺の【練習】が終わったら、次はカナちゃんの【本番】をして? そしてそのお礼に、俺の【本番】もさせてほしいな? ……ねぇ、いいよね?」
「んっ!」
カナタの腰を直接撫でつつ、ツカサは角度を変えてカナタの唇を堪能する。
しかし、ツカサの言葉が真実であるのならば……。
「ん、んっ! ……ふぁ、あ……ん、ぁ」
カナタが思わず、甘い吐息を漏らしてしまうこのキスは……ツカサにとって【練習】なのだ。
ツカサの唇が離れても、すぐに近付く。まるで、捕食をされているような気すらしてくるキスだ。
素肌を撫でられながらキスをされるカナタは、何度も体を跳ねさせてしまう。
その反応すら、ツカサにとっては愛しさの対象になってしまうのだった。
「……ん、ありがと。いっぱい練習できたよ」
ようやく【キスの練習】が終わると、ツカサは満足そうにそう呟く。
しかし、当のカナタはと言うと……。
「って、あれっ? カナちゃんっ? 大丈夫っ?」
──肩で息をしながら、蕩けた表情でツカサのことをぼんやりと見つめていた。
脱力をしているカナタを見て、ツカサは目を丸くしたのだが……。
「ツカサ、さんの……ばかぁ……っ」
「そんなっ! カナちゃんに、罵られた……っ! なっ、なんでぇっ?」
すぐに、カナタからの言葉によってツカサはショックを受けた。
ハァと荒い息を吐きながら、カナタは涙目で訴える。
「──もっ、これ以上……上手に、ならないでください……っ。オレ、変な気持ちになって……キスだけで、エッチな気持ちになっちゃいます……っ」
素直なカナタを見て、ツカサはまたしても目を瞬かせた。
……しかし、すぐに。
「俺だけの、可愛いカナちゃん。キスだけじゃ足りなくて、もっともっと欲しがっちゃうなんてさ。恋人としては嬉しいことこの上ないよ」
満足そうに微笑み、カナタが着る服に手をかけようとした。
……だが、なにかを思い出したらしい。ツカサは一度カナタの体から手を離し、自身の下半身に手を伸ばした。
それからすぐに、ズボンのチャックを下げて……。
「ちなみに、俺の下着の色は黒でした~っ。カナちゃんのパンツは何色かなぁ~っ?」
「オレ、のは──」
「──青色だよねっ」
「──どうして知っているんですかっ!」
相変わらずな態度で、ツカサはカナタを翻弄したのであった。
オマケ②【そんなに上手にならないで】 了
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