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③ : 4

 なんだかんだと、見慣れた和解──和解? をした二人と共に、カナタは帰宅。  ツカサお手製の夕食を三人で食べ、ツカサが準備をしてくれたお風呂に順番ずつ浸かり、ツカサが整えてくれたベッドに腰掛け……。 「──オレ、もしかしてツカサ君に甘えすぎじゃないっ?」  カナタは今、ツカサが用意してくれていたホットミルクを飲みながらハッとした。……あまりにも、今さらすぎる気付きによって。  そんなカナタを背後から抱き締めたまま、ツカサは優しく笑った。 「そんなことないよ? 現に今、俺はこうしてカナちゃんに甘えているしね?」 「……もしかして、オレのことを堕落させようとしていない?」 「失敬な! カナちゃんには【俺ナシじゃ生きていけない体】になってほしいだけだよ!」 「堕落させようとしてるっ!」 「あははっ、ヤダなぁ? それは言いがかりだよ、カナちゃん?」  笑いながら、ツカサはカナタに回した腕に力を増させる。 「少なくとも、俺はカナちゃんナシじゃ生きていけないもん。だから、俺もカナちゃんをそうしたいだけ。対等な関係を望んでいて、そうなれるように常日頃手を尽くしている。カナちゃんと歩む人生で、手抜きをしたくない。……俺は、いじらしい男だよ?」  物は言いようだ。危うく、納得しかける。 「あのね、ツカサ君──」 「ふふっ。カナちゃん、今日も大好きだよ」 「わわっ!」  それでも対抗しようとしたカナタの言葉を遮り、ツカサはカナタの首筋に顔を埋めた。マグカップを落としそうになったカナタは、すぐにベッドサイドテーブルへマグカップを置く。 「ツカサ君、その。……最近、愛情表現が前にも増してストレートと言うか、豪速球と言うか……」 「【新婚】は今だけの特別なステータスだよ? たっぷり楽しまないと」 「そうだけど、本当にそれが理由?」 「新婚という立場を利用して、堂々とカナちゃんに甘えているだけだよ~」 「わっ、ちょっと、くすぐったいよ……っ!」  すりすりと、ツカサがカナタに甘える。 「仮に、日中は俺の方がカナちゃんに尽くしていたとしてさ。二人きりの時に甘えているのはいつだって俺ばっかりだよ。だから、俺たちはこれでようやく【対等】になれる」 「う、ん?」 「だから俺は今まで通りでいいし、カナちゃんもこのままでいいんだよ~」 「うぅっ、絆されてるぅ~っ」  しかし、振りほどけない。カナタは背中にピッタリとツカサをくっつけたまま、困った様子で唇を尖らせる。 「ツカサ君って、結婚しても変わらず狡いよね。それに、なんだか余裕って感じがする」 「確かに、少しだけ【余裕】ってものは得られたかな。これで、カナちゃんを戸籍上で手に入れられたからね」 「規模が大きいよ……」  上機嫌なツカサを見られて、嬉しくは思う。だが、まだまだカナタに【慣れ】はこない。  人を好きになり、人に愛されて……。こうした幸せにまだ、カナタは慢心なんてできそうになかった。  それでもツカサを振りほどかないのだから、果たして狡い男はどっちなのか。カナタは回されたツカサの手を握り返して、自嘲気味に笑った。

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