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③ : 5
カナタを背後から抱き締めたまま、ツカサはカナタの耳元に唇を寄せた。
「それに。カナちゃん、俺が『新婚だから』って言ったらなんでも許してくれるでしょ?」
まるで、わざと確信犯的な言い回しをしているようだ。ツカサの囁きに、カナタは露骨に頬を膨らませる。
「むっ。『なんでも』は許さないよ? 駄目なことは駄目だもん」
「そっかぁ。……ところで、さ。俺、今日も色々と頑張ったよね? だから、ご褒美としてカナちゃんからキスしてほしいなぁ、されたいなぁ? 新婚だし、いいでしょ? ……ダメ?」
「うっ」
コテンと、ツカサがあざとく小首を傾げてカナタを見つめ始めた。あえて説明する必要もないが、こうしたツカサの分かり易い【甘え】に、カナタは弱いのだ。
逡巡すること、数秒。カナタはパクパクと口を開閉させた後、まるで言い訳をするように。
「……まぁ、その。キスくらい、なら、別に……っ」
前置きをしつつ、ツカサの唇にぷちゅっと可愛らしいキスを贈った。
当然、ツカサの表情は笑顔。ニコ~ッと心底嬉しそうな笑みを浮かべながら、照れているカナタを見つめていた。
そんなツカサの笑顔を見て、カナタの頬はより一層赤く染まる。
「なっ、なんでニヤニヤするのっ!」
「ううん、なんでもないよ? 俺、生まれつきこんな感じの顔だからさ」
「うっ、嘘だよっ! ツカサ君、いつもより意地悪な笑顔をしてるっ!」
「えぇ~っ、そうかなぁ~っ?」
「そうだよっ!」
揶揄われたと気付き、恥ずかしさからツンとした態度を取ってしまう。
しかしそうすると、ツカサはいつだって……。
「それじゃあ、お礼」
カナタの機嫌を、いとも容易く取ってしまうのだ。
拗ねるカナタの頬に、今度はツカサからキスをする。驚いたカナタが顔をツカサに向けると……今度はすぐさま、唇にキスが落とされた。
「あ、っ。ツカサ、く……ん、っ」
ちゅっ、と。小さな音。
それから、すぐに。触れるだけの口付けは過激さを増し、ツカサの舌がカナタの口腔に差し込まれた。
ツカサに捕らわれたカナタは、驚いても抵抗はしない。
「んっ、ぅ……っ」
懸命に、ツカサへ応える。そうするとツカサが上機嫌になるのは、言わずもがな。それがなんとなく分かってしまったからこそ、カナタはツカサの舌に自身の舌を絡めた。
ようやくキスから解放されると、カナタは背後に座るツカサへもたれかかりつつ、ポツポツと呟く。
「な、なんか、あの。今日のキス、音が……エッチな、気がする……っ」
「うん、わざとだよ?」
「そんな、サラッと……!」
真っ赤になったカナタを眺めるツカサは、相変わらず笑顔だ。
「出会った頃から変わらないね。キスだけでこんなに、いっぱいいっぱいになってくれる。沢山俺を意識してくれて、嬉しい」
「ツカサ君……っ。……本当に、嬉しそうだね?」
「ウソなんか言わないよ。ホントに、すっごく嬉しいっ」
ツカサが、ここまで自分を愛してくれる理由。笑ってくれる理由は、カナタが【家族】になったからなのか。
「大好きだよ、カナちゃん」
そう思うと、胸の奥がキュッと締め付けられるのだから。やはりカナタは、ツカサに勝てない。
「……ツカサ君。手つきが、エッチだよ」
「今のキスでスイッチ、入っちゃったからね。俺って分かり易い男でしょ?」
「なんでちょっと自慢気なの? ……んっ」
服の下を冷えた指でまさぐられようと、抵抗する気が起きなかった。
この時点でカナタは、ツカサの愛情表現を責められないのだが。……そんなことは当然、どちらも口にしなかった。
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