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4.カフェで雷に打たれた件

ーーミズキ先輩との出会いを語るまえにすこし、おれの自己紹介に付き合ってもらいたい。 おれの名前は佐藤快星。 快星(カイセー)って名前が付いてる男がいたら、たぶんほとんどのひとは「爽やかでスポーツマンシップな好青年」を思い描くと思う。 でも実際のところはそうじゃない。 好きなものは漫画とアニメとゲーム。小さい頃からインドアな遊びばっかりしていたせいで目を悪くして、小学校のころから分厚いメガネをかけ、中学校ではパソコン研究クラブ、ファッションセンス皆無なせいで強制私服参加だった修学旅行ではダサすぎてまわりから浮きまくり、高校でも漫画研究部のオタクたちとつるみ、結局、生まれた年月=彼女いない歴絶賛更新中のモテないダサ男ができあがった、というわけ。 ちょっとイイな、と思う女の子がいたとしても、話しかけたりする前から「おれなんかじゃ絶対ムリ」だって諦めちゃう。 ちなみに「佐藤快星」の画数で姓名判断するとさ、全体的に運勢は悪くないんだよ。人格運、仕事運、総格とかは吉〜大吉がほとんどなんだけど、「家庭運」だけ「大凶」でやんの。 『破綻 失敗 多難 離縁 散財。 良いパートナーをつかむ事はほぼ出来ないでしょう。仲が良いのはほんの一瞬、結婚出来ても長続きはしません。』 …だってよ。とーちゃんかーちゃんには悪いけど、まじで正直これは……恨むよね。おれだって一生に1人くらい、本気で好きなひとと大恋愛して結ばれてえわwwww そんでやっと、地元から離れた大学への進学が決まった頃にようやく、おれはまず見た目から自分を変えることを心に決めたんだ。 大学が始まる一週間前、親が契約してくれたアパートでとりあえずの荷解きを終えたおれは、まずコンビニで手当たり次第にファッション雑誌を買ってファッションを勉強し、初めて入った店の美容師さんに「これにしてください」と表紙の男性モデルを指差して髪型をなんとかしてもらい、その美容師さんに言われるまま3000円くらいするシャンプーとコンディショナーを呼び含め2本ずつ購入し、ぴかぴかの状態になって生まれ変わった気がしたおれはそのまま薬局に行ってヘアワックスとかいう謎アイテムをカゴにぶちこみ、雑誌の「男の身だしなみ」コーナーに習って一番メインっぽいコーナーに置いてあったメンズスキンローションとメンズビオレのスクラブクレンジング洗顔を買って帰宅した。 そして絶望した。 学校へ着ていく服がない。 それに腹も空いた。 そこで生まれて初めて「カフェ」とかいうオシャレ空間に足を踏み入れたおれを「いらっしゃいませ」と柔らかい声で迎えてくれたのが、ミズキ先輩だった。 一瞬で恋に落ちた。 あれが一目惚れじゃないっていうならなんだっていうんだってくらい、おれは見事に雷に打たれたんだ。

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