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7.カフェバイト初日!の件 続

「佐藤カイセーくんですね。店長のナリタです。よろしくお願いします」 「よろっよろっ、よろしくお願いします!!!」 「はは、そんなに緊張しなくていいからね。電話でも伝えた通り今日は一時間だけだから大丈夫。今日教えるのは基本的なこと、お店の制服とかルールとか、時給の話とか、シフトの申請の仕方とかそんなもんだから」 「はいっ」 「とりあえずこれに着替えてくれる?」 そう言って店長が渡してくれた制服は、ほかのスタッフさんと同じ白シャツ。エプロンの色は研修中だということで白と黒のストライプだった。これはこれでかっこいいな… ロッカールームで着替えてみると、なかなかサマになってる。ごめん自画自賛だけど。もしかしたら今日のおれはなかなかイケてるかもしれないって勘違いしちゃいそうになるくらいにはキマってた。 「店長!!着てみました!!!」 「おーーいいね。サイズも合ってるみたいだし。大丈夫?キツかったりしない?」 「大丈夫っす!!!!」 「はは!威勢いいねえ。そんなに張り切らなくてもいいからね」 「はいっ!!!!!!!」 「じゃあとりあえず座って。まず最初に入店ルールと雇用形態の説明をするね」 「はい!!!!!!お願いします!!!!!」 ・ ・ ・ 疲れた。 初日、たった一時間、何もしていないのにドーーーンと疲れてしまった。バックヤードで店長から一対一で説明を受けて、最後にさっと店内と店の外周を案内してもらって、それで今日のおれの出勤は終わりだった。 カフェを出た時間は17時。 おれが店長にくっついて研修受けてる間もお客さんはひっきりなしに来てて、すげー繁盛してるんだな、先輩スタッフもみんな忙しそうに働いてて、でもそれがすごく生き生きとした姿に見えて、なんだかすげーかっこよかった。 本当なら、このあと夜のお客さんがどっと入ってきてもっと忙しくなるんだろうな。あれから天使先輩には会えなかったけど、きっと天使先輩も頑張って働くんだろう。 はやくおれもその一員になりたい。はやくメニューとか仕事とか覚えて、天使先輩と一緒に働きたいな。 ……もしかしておれ、いまワクワクしてるのかも。そうだ、ワクワク、ドキドキしてるんだ。 これはゲームや漫画の世界じゃない、リアルの世界なんだ。 リアルの世界で、おれ、こんなにワクワクできるんだ。 働くって、実はすごく楽しいことなのかもしれない。 ここからおれの物語は始まるんだ。 おれが主人公なんだ。 もらったばかりの新品の制服をいれたカバンをぎゅっと握りしめ、未来に胸を高鳴らせてその日おれは帰路に着いた。

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