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8.接客練習の件
「お!おはよー、制服着てきたねカイセー!じゃあ今日はオーダー取りの練習するから」
「えっ」
うそでしょ。もうお客さんと喋らなきゃいけないの?
初日研修の次の日、裏で制服に着替えて出勤したおれは店長のナリタさんからそんなことを言われ、めちゃめちゃキョドッた。だってまだメニュー全部覚えてないもん!!
「も、も、もうですか?!」
「はは、そんなにビビらないでよ。今日は実際のお客さん相手じゃなくて、僕が練習相手になってやるから大丈夫」
「よかったですぅ…😢」
やばい。安心しすぎてバブの人格を出してしまった。店長のナリタさん、頼りになる大人の男って感じでお父さんみたいだから、なんか甘えちゃうんだよなあ。
「ウチはメニュー多いし、お酒の種類も豊富だからなかなか全部は覚えるの大変だからね。今日はオーダーの基本的な流れとお水とカトラリー運ぶまでを反復練習して覚えてもらって、そのあとはチラシ折りの内職系をやってもらおうと思ってるよ。今日はシフト3時間だけだもんね」
「はいっ!」
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「い、いらっしゃいませ〜〜…」
「うんまぁオッケー、ちょっと笑顔が硬いけど慣れれば自然と笑えるようになると思うよ」
「にゃんめいさまですか?」
「…ネコ…?」
「ごりゃいてんありがとうごじゃいます!まどぎわのお好きなお席へどうじょ」
「カイセー、窓際のテーブル全部埋まってるよ〜〜〜」
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おれ、客商売向いてないかもしれない。
入店したお客さんを席へ誘導してメニューを手渡して説明する、そんな単純な流れすら噛みまくり、つまづきまくり、ミスりまくったおれはほとんど涙目で。
マンガの主人公の女の子(ドジっ子眼鏡ロリメイド巨乳)ですらこんな失敗しないぞってくらいやらかしまくってズドーンと落ち込んでたら、あまりにバカっぽかったのか同情してくれた店長がバックヤードで慰めてくれた。
「カイセーってもしかして人見知り?」
「へけっ」
「だよね〜〜😅まあ大丈夫!最初は皆こんなもんだからさ、なぁミズキ、おまえも初日酷かったもんなあ」
「店長!やめてください💦」
え!?天使先輩!?
全然全く気付かなかったけどいつのまにか天使先輩が出勤してきてて、キッチンのサラダコーナーでサラダを盛り付けていた。もっさり盛ったレタスリーフをトングで丁寧に角度を調節してて、見栄えが良くなるように工夫してるのはさすが天使先輩。
仕事中に店長に絡まれてもふつーに作業を続けてて、そんなところもさすが先輩だなって関心しちゃう。
直前でハム太郎みたいな相槌を打ってしまったおれは恥ずかしさと、気になってる人に初日の連発ミスをバラされたみっともなさで赤面してしまう。
名前、ミズキ先輩っていうんだ。
ミズキ先輩はこの前はフロアでおれの接客をしてくれたのに、今日はキッチンで料理任されてるんだな。もしかしてなんでもできちゃう系?と思って見守ってるうちにささっとサラダを仕上げて、フロアのほうへ「これ◯番テーブルにお願い」と渡して、今度はタイミングよく茹で上がったパスタをフライパンに移してソースを絡めてる。
すっげーーー手際いい!
ミズキ先輩すげえ…!!
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