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11.世界一うまいオムライス事件 続

「カイセー、あのさ、オムライス好き?」 「へっ?まあ好きッスけど…」 「よかった〜!これさっき作りすぎちゃってさ、食べてほしいんだけど😂」 と天使が差し出してきたのは、本日のオススメ・ホカホカのビーフシチューオムライスだった。これ知ってる!さっきめちゃくちゃサーブしたもん!!!トロトロの牛肉のかたまりがゴロゴロ入っててビジュアルからしてやべ〜〜やつ!!!!! 「え、いいんですか!?!?」 おれは叫んで、差し出されるままにビーフシチューを受け取った。うわ、めちゃくちゃいい匂いする…!!!! 「ほんとにいいの?大丈夫?まかないで食べたいメニューもう決まってたりしない?💦」 内心でおれが飛び跳ねるほど喜んでヨダレ垂らしてるっていうのに、天使先輩は「残り物処理をお願いするようで悪いけど💦」って心配してて、いやいやなに言ってるんですか、だってこれってつまり先輩の手作りってことですよね!?!? 「いやっっっ全然いただきます!!!!っていうか是非食わせてください!!!!!!」 正直いうと肉盛りステーキプレートとかめっちゃ気になってて食いたかったんだけどそんなんいつでも食えるし!!!? 天使先輩の手料理最優先ッス!!!!! 「ごめんね助かる〜💦あ、あとお水も持ってきたからご一緒にどうぞ💦」と天使先輩はLカップになみなみ注いだお水もバックヤードのデスクに置いてくれて、やばいまじで天使なんですか?ちょうどおれめっちゃ喉渇いてたんです! 「ありがと〜!じゃ、またあとでね」と忙しそうにキッチンに戻っていくミズキ先輩を見送り、おれはバックヤードでひとり、出来立てホカホカのオムライスを前にしてごくりと唾を飲む。 はぁ………天使先輩の手作りオムライス……… 丸い深皿プレートにたっぷり盛られたビーフシチュー。トロトロに煮込まれた牛肉のかたまりがごろごろ入ってて、そのビーフシチューの海に浮かぶ島みたいにトロトロ・フワフワな黄色い卵がこんもり盛られてる。湯がいたブロッコリーとニンジンが色鮮やかで、添えられたクレソンも嬉しそうだ。(?) ねえ先輩、どうやったらこんなに卵をふわふわに仕上げられるんですか? 感動で胸を震わせながらたまご島にゆっくり差し入れると、なかはなんと、おれの大好きなチキンライスじゃないですか…!!!あぁ神さま、店長さま、このメニューが『チキンライスの』ビーフシチューオムライスだなんておれ聞いてなかったッスよ…!!!!ありがとうございます…!!!!感動しました…!!!!!(泣)大正解です…!! スプーンでひとさじひとさじすくって口に運ぶたび、天使先輩のふわふわ癒し笑顔を思い浮かべながらおれは感動とおいしさでむせび泣きそうになった。まさかすきなひとの手料理をこんなに早いタイミングで食べられるなんて思ってないじゃないですか…!!!!うわーーー美味しすぎる、おれこのカフェでバイト初めて本当に良かったです……!!(泣)大好物ってわけではなかったけど今この瞬間からオムライスはおれのナンバーワン大好物になりましたし、このおいしさ、おれの魂-ソウル-に刻み込みました…!!! あ やばいしぬ 写真撮り忘れた ……… ……😭💔 今さら大後悔したって時すでに遅し、半分以上食べてしまっていた。 でもこの出来立てホカホカの温度じゃないと得られない美味さと感動があるから、おれが写真を撮ったのは舐めるほど綺麗に食べ切った空っぽのお皿とスプーンだった。 否、この皿は空っぽなんかじゃない。 天使先輩の優しさと思いやり深さ、愛情とかが詰まってるんだ。元々お客さんへ出すつもりで作ったらしいから厳密に言えば『お客さんへの』愛情なんだけど、ここは都合よく行こうぜおれ!『ミズキからカイセーへの愛情』だぜyeah!!(呼び捨て)(童貞あるある:なにも関係が進んでいないのに"俺のもの"意識が芽生えている) 残りの休憩時間、おれは『先輩の手料理』フォルダを作って写真をそこに保存し、ただの水のはずなのにすげーー美味い気がするLカップの水をすべて飲み干し「ミズキかわいい」「ミズキ好き」と口の中でぶつくさ呟きながらたらふく膨れたお腹をさすって至福の時を過ごしたのだった。

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