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12.アイスコーヒー事件

あいかわらずおれは、大学とカフェバイトを往復する日々が続いていた。 高校2年の時にバイク免許、高校卒業した春に短期合宿で車の免許を取った費用とか、ねだって買ってもらった中古原付を親に借金してるからさっさと返したかったってのもある。せっかく二人乗りできる普通二輪免許を取ったのに、ちっこい原付でせかせか街を走ってると、例えば信号待ちで隣に400のスーフォアやツーリング先でZRXなんかを見ると「あーカッコいいなぁ、いつか乗ってみたいなぁ」なんて思っていたのもまた事実。あんなかっこいいバイクに乗ることができたら、おれがオタクなこととか、18になっても未だに童貞なこととか、そんなちまちましたコンプレックスなんて全部ふっとんでいくんだろうな、なんて思ってみたり。 童貞コンプレックスと排気量コンプレックスでがんじがらめになってるいまのおれはめっちゃカッコ悪いけど、まだまだ大学一年生だし、伸び代たっぷりの発展途上なんで😁✨ 卒業までには恋人もゲット! 親に借金返したらバイト代は全部貯金してデカいバイクもゲット!! ついでに大手企業から内定もゲットしてイケイケの男になってやるんだぜ✨😁✨ ・ ・ ・ 「店長、ミズキ先輩、お疲れっした!お先に失礼します!」 「お疲れカイセー!なんか最近調子いいんじゃない?なにか良いことでもあった?」 「へへっ…なんもないっすよ〜〜〜」 「え、なにその顔(笑)めちゃくちゃ緩んでるよ(笑)(笑)」 「なんもないですって!」 うそです、無茶苦茶に良いことありました。 あの日ミズキ先輩が作ってくれた(語弊あり)ビーフシチューオムライスのおかげか、おれはバイト先でめきめきと頭角を表していた。 やっぱ好きな人からもらったSSRレアアイテムは特別、バフ効果も長いんだな〜〜😁✨ しかも今日はフロアのミズキ先輩とシフト被ってたから軽く雑談もできたし!も〜最高よ、は〜〜、またバイト頑張れるわ〜〜〜。 お金も貰えて好きな人と喋れて、ここは天国かってかんじ。 鼻歌混じりで青エプロンを脱いで、ささっとうえにウィンドブレーカーを羽織る。 そう、おれは研修期間を終えて、白黒ストライプのエプロンから一人前の青エプロン戦士へとレベルアップしたのである。これは大きな進歩である。 それに今夜は25時からお気に入りアニメ番組がテレビ放送されるし、これから速攻家帰って風呂入って大学の宿題レポートまとめてアニメリアタイしちゃうぜ!!!なんて気合い入りまくり。あーー気分良い、やっぱおれはやればできる男だったんだなってTwitterでアニメの最新情報出てないかなって軽くチェックしてたら、ひょこっとミズキ先輩がバックヤードに顔を出した。 「カイセー、」 「ふぁい!?!?」 「あ、ごめんビックリさせちゃった?💦」 「あ、いえ、そんな、ぜんぜん……」 うう。ミズキ先輩にはノッてるときのおれの姿だけ見てもらいたいのに、急に来られると素が出てしまう💦 「新しいコーヒー豆仕入れたやつの試飲があるんだけどさ、いま飲む時間ある?」 「あります!」 え、なにこれまたボーナスタイム来ました!? オムライスに引き続き、天使先輩の淹れたコーヒーが飲めるんです!?

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