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19.先輩の連れがヤなやつだった件
ミズキ先輩の隣にいる男は、一言でいえば"遊んでそう"な派の学生だった。明るい茶髪をヘアワックスかなんかでツンツンさせた、ファッション雑誌のイケてる男みたいな垢抜けた都会ファッションな服装。
ミズキ先輩は金髪、連れの男も派手めの茶髪だからよく目立ってて、大きな声で会話してるところもあわせて、おれとは明らかにスクールカーストの違う2人組だった。
胸がザワついた。
先輩、ああいう輩とつるむようなタイプだったんだ。そりゃそうだよな、バイト先はオシャレカフェで、髪型もふわふわパーマの金髪で。出退勤のときもおしゃれな格好してたもんな。バイク野郎だってイカしたバイクに乗ってる羽振りの良さそうなチャラっぽい奴だし…
なんだかまざまざと"違い"を見せつけられたかんじがして、劣等感で胸が苦しい。
「あれ!?うそ、カイセー!?同じ大学だったんだ!?」
おれの呼びかけに気付いたミズキ先輩は、あのいつものノリできゃっきゃと反応してくれる。
おれみたいな雑魚モブキャラの登場でも喜んでくれるのが嬉しいやら恥ずかしいやら。こんな大声で校内で会話したり名前を呼ばれたことないおれも、釣られてボリュームがデカくなる。
「まさか先輩と同じ大学だったなんて知らなかったっす!学部どこですか?」
性格の悪いおれは、ミズキ先輩の隣に立っている男に見せつけるように努めて明るい声を出す。おれとミズキ先輩の親しさを知らしめるように。隠キャ奥手オタクはこういう輩にすぐ舐められるから、いつもよりオーバー気味に振る舞った方がいいだろうという判断だった。
「◯◯学部だよ〜」
「なんか"ぽい"っすねww」
「そう?オーラ滲み出ちゃう?」(謎のドヤ)
おれの自意識過剰だろうか、ミズキ先輩の連れは腕組み&貧乏ゆすりして『このキモオタ誰?ミズキの知り合い?』という顔でおれたちの会話を見守っている。
「カイセーこのあと授業は?」
「無いっす!16時からバイトなんですぐ行きますけど…先輩もたしか今日シフト一緒ですよね?よかったらおれ送っていきましょうか」
"たしか"なんて言葉出してみたけど、おれは昨晩もその前も、つい5分前も写メったシフト表を眺めてニヤついていたのでもちろん確信犯で話を振った。
即時オーケー貰えるかと思ったのに、ミズキ先輩は隣にいる男をちらっと見て「えーと…」と言いづらそうにする。
「いいじゃん乗せてってもらいなよ」
「うん💦ごめんね」
「いいって。よかったじゃん良いアッシー見つかって」
「ちょっと、そういう言い方はないじゃん」
「事実でしょ」
「もーー怒んないでよタケル〜!」
……あれれ、あれあれ💦
どうやらミズキ先輩は、この男にバ先まで送ってもらう約束をしていたらしい。そこにおれが首をつっこんだもんだから、先輩との約束を反故にされた男は『おまえから頼んできたのに、なんだよ』ってキレぎみな態度みえみえで……
先輩もキレられては今更「やっぱりお願い」なんて言えないんだろう、男のご機嫌を取ろうとしても取り付くしまもなく。
話し合いで解決もせず、一方的に「じゃーな」と話を遮って去っていく男の背中に、むくれっ面を返すミズキ先輩。
けんか別れじゃん、こんなの💦
ってか、タケルとかいう名前のあいつもあいつで、あんなに怒ることないじゃん💦短気でヤなやつだな〜💦先輩、なんであんなのと仲良いんだろ…
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