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20.おれのバイクの後ろ!の件
先輩がつるんでる人にまで良いやつとか悪いやつとか、そんなジャッジを下したいわけじゃいけどさ、でもあのタケルとかいうやつはなんだかムカつく。先輩の腰抱いてたし、それまで仲良さげだったのに急に態度変えたりして。ケンカするほど仲良いってやつなのかもしれないけど。おれだったら友達に対してあんなキレぎみの態度取らないし、もし先約を切られても快く送り出してやるのに。
なんか後味悪いなあ………
「すいません…元々あの人に送ってもらう予定だったんですよね?おれが変に首つっこんだからケンカさせちゃったみたいで…すいませんでした」
「大丈夫だよ、あいつすぐキレる奴だからさ〜。でも大体つぎ会ったときはケロッとしてるからほんとに大丈夫。こっちこそごめんね、やな思いさせちゃって」
「全然!おれは大丈夫です」
話しながら、原チャを停めてる校舎裏の駐車場へ向かった。片側は校舎、片側はうっそうと生い茂った保護樹林だ。この緑は、校舎建設を進めるまえの自然の虫や蝶を残すためのものだって、なんかの講義で言ってた。
校舎練と駐車場を繋ぐまっすぐな舗装道路は、いま俺たちだけが歩いてる。バイト先で仕事の合間に話すのとは違って、こうやって緑を横目にしがら隣り合って歩くのは清々しくて気恥ずかしい。…って思ってんのは俺だけかな。
そんなことより、おれはこのまえ居酒屋で先輩とチョメチョメしちゃったことを謝らなきゃなんだけど…つ、ついでに、こ、告白も………
ふたりきりで散策路を歩いてるいまこそ絶好のチャンス。
今しかないだろ!
「あのっ…!!」
「あっねこちゃんだ!」
おれが口を開くと同時にミズキ全然が明るい声を上げる。ね、ねこ?
慌てて先輩の視線を追ってみてもそこには舗装道路と木々があるだけで。
「あーーいっちゃった……」
「ねこがいたんですか?」
「うん三毛猫!ちっちゃかったからまだ子猫じゃないかな?校舎のほうから出てきて森へパーッて走ってったの。この森に住んでるのかな」
「ど、どうですかね、そうかもしれないスね」
「ねこちゃんかわいかった〜♫こんど猫缶買ってきてこの辺でうろうろしてみよ♫」
ねこー、ねこー、と呼びながら雑木林を覗き込むミズキ先輩。かわいい。ねこ好きなんだ。
「っていうかカイセーさっき何か言いかけなかった?」
「え!?あの、えっと、そのー…」
そうこうしている内にバイク駐車場に着いてしまった。こんなに早く『好きな人を後ろに乗せる』事態になるならもっとかーちゃんにゴネていいバイク買ってもらうんだったと恥ずかしくなりつつ、ケツポケットからキーを出した。だって先輩は、普段からコレの何倍もいいバイクに乗せてもらってるんだもんな。
バイト先へはいつもこの原チャリで通ってるからダサい田舎っぽい中古原チャリに乗ってるってのは既に先輩も知ってるからべつにいいんだけど、いざ『乗せる』となると、なんかこう…違うじゃん!?覚悟が!
サブヘルメットだってもっとイカしてるの買っておくべきだったし、ああ、もうなんか色々ダメだ!!!
「カイセーに乗せてもらうの初めてだ〜♫」
ありがと〜♫とにこにこしておれからヘルメットを受け取る先輩。装着すると柔らかそうなほっぺの肉がムギュッとなって、ぷるぷるの唇がタコみたいにつんと突き出すのがめちゃくちゃ可愛くて、おれは身悶えてしまった。
「っ〜〜〜〜!!!///」
「え、なに、なんで笑うの、なんか変?」
「いや、あの、その…!////」
あなたがあんまりにも可愛いから笑っちゃうんですって。
「どうせぼくが変な顔してるって笑ってるんだろ!メットでほっぺ ぷにゅってなっちゃうのはしょうがないだろ!」
「じ、自覚あったんスね…うぷぷ…ww」
「うるへー!さっさと乗せろ!!!遅刻するだお!」
「www滑舌悪くなってるwwwwww」
バイト先へは10分、勤務開始まではたっぷり1時間あるから全然遅刻の心配はないのにプンスコするミズキ先輩が可愛すぎて、運転シートに座ってエンジンふかす間も、ひとつも緊張しなかった。
…まあ、「準備できたんで乗ってどーぞ」って声かけた途端おれの後ろに先輩が乗ってきて、身体をぴったり密着させて腰に抱きついてくるのには、めちゃくちゃアガっちゃったんだけど。
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先輩の手はいまおれの腰に回されてるワケで。
男の腰の下には、暴れん坊なアレがぶら下がってるワケで。
運転中は結構なデカさでエンジン鳴るから自然と会話は止まりがちになる。
信号待ちで止まるたびにおれは何か話しかけなきゃって思うんだけど、どな話題を振っていいのかわからずずっと無言の時間が続いてる。天気いいっすね〜とか、風きもちいいっすね〜とか、そんな当たり障りのない場繋ぎの話したらいいんだろうけど。
あれこれと気を回そうとすればするほど下半身がヒートアップしてしまってヤバいのです。
…だってさ、
「カイセー(の背中って)おっきいんだね〜」
って、うしろからぎゅってされたらさ、もう………分かるでしょ?
しかもギュッてされてるその真下には、暴れん坊なおれのちんこがいて、あなたを乗せてるってだけで結構かなりギンギンになってるんだよ?
確信犯なんスか?
惑わしてくるのもいい加減にしてくれないっすか?(怒)
このあとバイトなんですけど???
おれのちんちん軽率にムラムラさせて、あんた一体どうしたいんスか????襲われたいんスか???え?????は?
その後、後ろに本人を乗せてるってのにおれのあたまのなかは『おっきいんだね』が永遠にリピートされてもーーー色々と大変なことになってしまって、信号待ちで暇そうな先輩が「えいっ」ってコチョコチョしてくるのにもますますちんちんイライラしちゃって、わざと軌道ブラしてやったら「うわッ!」っておれの腰に抱きついてキャッキャしてて、もう……
なにこれ?
これが『イチャイチャ』っていうあれなんですか?
ラブコメで付き合う寸前のふたりがその絶妙な距離感を楽しんじゃうっていう、読んでるこっちが「こいつら付き合うか付き合わないかどっちなんだよー!!」ってハラハラドキドキワクテカするかんじの、でも展開的に絶対このあとふたりはくっついちゃうかんじのやつの、あのーーー!!!!???
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