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22.デート 待ち合わせ〜映画館の件

☆初デートを成功させるための8つのルール☆ ・待ち合わせに遅刻しない ・身だしなみは清潔に ・お互いに楽しめるデートプランを立てる ・なるべくポジティブで楽しい会話をする ・デート代はスマートに払う ・相手に好意を伝える ・次のデートの約束をする ・性的なことをほのめかさない(ラブホには誘わない) ・ ・ ・ とある土曜日。舞浜駅・改札出口前にて、おれは眠い目を擦りながらスマホにしたためたメモを確認していた。 上記の8項目はこの日のためにおれがありとあらゆるサイトを巡って学び得た「初デートの心得」であり、本日のおれの行動指針である。ここでトチってはいけない。童貞卒業したて、大学入学したて。好きな人に気に入られるため、今日おれは全身全霊をもってこれに臨む! …… ………あーー…ねむ…つらい……… 実を言うと、気合い入りすぎて待ち合わせの2時間前には駅へ着いてしまっていた。 それというのも昨晩もまた隣室が夜遅くにヤッてて、こっちも意地になって(?)オープンワールドに居座ってたら気付いたら窓の外が明るくなってて、さすがに途中で隣の部屋が静かになってたには気付いてたんだけどあとちょっとだけ…このモンスターを倒してから…って体力ジリ貧してたら、結局やばかったのは自分の体力のほうだったというわけ。勝負には勝ったはずなのに全然嬉しくなかった。(そりゃそうだ) 朝ご飯も喉を通らず。出掛けたもんだから昼ご飯も逃してお腹はぺこぺこ。 まだ若いから徹夜しても大丈夫って思ってたけど、やっぱり高校生の頃のようには行かないらしい。あの頃は完徹後に授業受けても余裕だったのになあ。年取ったな…(授業中に寝てた) すぐそこのコンビニでホットスナックでも買って食べようかなって思うけどその間先輩が来ちゃってもあれだし、変にお腹満たして夕食食べられなくても困るし…と持参したヌンテンドースウィッチを点けたり消したりして時間を潰すことしばらく。 「ごめーんお待たせ!!」 天使がやってきた。 根元がプリンになってた金髪は脱色し直したのか綺麗なふわふわ。最近は先輩も人間なんだなって感じる機会が増えたせいで天使の輪っかと白い羽根の幻覚は見えなくなってきてたけど、おれのところへ小走りでぱたぱたやってくる先輩はやっぱり天使だった。 「乗り換え間違えてさー、しかもやたらエスカレーター長くて」 走ってきて乱れた前髪を整えながら言い訳する先輩かわいい。内容もかわいい。もはや何もかもがかわいい。そのオシャレでラフなシャツとスキニーパンツは今日おれのために着てきてくれたんですか? 「カイセーはいつ着いた?」 「あ…さっきです!」 「ほんと?よかった!ねえ見て〜ここさっきぶつけたの😢」 「えぅっ大丈夫ですか!?」 ひじのあたりにちいさく擦りむいた傷があって、絆創膏の持ち合わせがない&対処法がわからないおれはアワアワ。自己申告してきたわりに怪我した本人は片手でさすりながら「映画何時だっけ?」とさっさと話題を変えてくる。 "来た"。こほんとおれは咳払いをして尻ポケットから出した手書きメモを読み上げる。 「本日の予定。 14:30から104分の映画を鑑賞。 16:14上映終了後、モール内で夕食。 18:00、アフター6のチケットを2枚使用しパークへ入場。パレードの場所取りを行う。 19:30パレード開始。 約45分間のパレード鑑賞後、20:15解散」 「え?なに?全部メモに書いてきたの?うそ、超マメじゃん、すごい見せて」 「はい、先輩の分も用意してきましたのでどうぞ」 「…うわ〜!!すご!カイセーってほんと真面目だよね〜〜バイトのときも全部教わったことメモしてるしさ、偉いと思うよ!尊敬する!そういうの社会出てからも絶対役に立つよ」 「はあ…」 「A型でしょ?」 「Bですね」 「(笑)(笑)(笑)」 …?おれなんか面白いこと言ったかな? 舞浜駅を出て、ヘクスピアリに向かって歩く。デデニーの玄関口というだけあって、外観はもうすでにテーマパーク!デデニーさながらの大きなゲートがお出迎えする大型ショッピングモール内には、デデニーグッズショップからファッション雑貨店、レストランまで約140店舗の店舗が軒を連ねている。景色がデデニーパークを思わせるコンセプト作りになっているのは、運営がパークを手掛けるモリエンタルランドの子会社がやっているからだそうだ。 すれ違うのは、デデニーキャラクターの被り物をかぶってペアルックを楽しむカップルたち。隠れオタク気質なおれとしては、ああやって"推しコンテンツ"を全身で主張して外部へアピールするようなやり方は苦手なんだけど、こうやって見てると……お揃い……いいな…………って思ってきちゃう。夢の国にどっぷり浸かって今日を楽しむのも悪くなさそう。被り物を見かけるたびに、あれもかわいい、これもかわいいって思ってしまう。今日、センパイも被ってくれないかなあ…😅🥰🌸 目指すのは、ヘクスピアリ内にある16スクリーンもあるメガシネコン。国内最大級のシアターなんて言われるそれが近づくにつれ、90年代のアメリカを彷彿とせる色鮮やかなネオン看板やカジノ通りのような賑やかさが目に付く。近くにいたカップルが「マンハッタンのブロードウェイみたい」って言ってたからたぶんそういうことなんだろう。まだなにも始まってないのに非日常的な海外旅行感でワクワクしてくる。先輩も同じ気分らしく「歩いてるだけで楽しいね!」だって。カワ…!! 土曜日の へクスピアリ・メガシネコンのメインフロアは家族連れや若者で賑わっていた。きっとおれたち(おれたち…!いい響き!)と同じスクリーンに入る輩だろう。機械に手間取りつつ座席表を発券して、フード&ドリンクの売店へ。 ポップコーン、ホットドッグ、チョコチャンクスコーン、ナチョス、カルツォーネ。腹ペコのおれには心躍るラインナップだ。 「なに食べよっか?映画館来るとフード食べなきゃ損って気がするよね」 「わかります。って実はおれ今朝からタイミング逃してメシ食べてなくて……」 「そうなの?じゃあしっかり食べなきゃ!」 「でもこのあと軽くメシ行くじゃないですか、だからそんなには…」 「そうだね〜…」 「でもホットチリドッグとキャラメルポップコーンは食べたいですね」 「結構いってるじゃん(笑)(笑)あ、そしたらペアセットにしようよ!ドリンクも付いてくるし」 ペアセット…素敵な響きだ。"カップルセット"とかいうネーミングじゃなくてよかった…なんつって!😅だめだこんな所で先輩とデートしてるとワクテカが止まらん! 列に並びながら話し合っていると、すぐに順番がくる。 「ホットチリドッグひとつと、ポップコーンペアセットお願いします。ドリンクはメロンソーダと…カイセーは何にする?」 「ア、アイスミルクティーお願いします」 「ガムシロは何個?」 「え、えと、みっつです」 「んー…ガムシロ5つ付けてください。注文は以上です」 あれよあれよという間にミズキ先輩が店員さんに注文を伝えてくれる。甘党バレするのが恥ずかしいおれの心を見透かしたのか多めにガムシロを頼んでくれる神対応っぷりには感激したし、1500円超えの支払いも電子マネーでピコンと済ませてくれて、そんな一連のスマートな対応に優柔不断のケがあるおれは惚れ直しそう。 注文した品を受け取って「すいません、ここはおれが支払うはずなのに」って財布出したら「いいって!せっかく誘ってくれたんだからこれくらいお礼させてよ」って。 「すみません💦」 「いいって(笑)スクリーン何番だっけ?」 「スクリーン…えっと…あれ?前売り券…どこにやったっけ…」 「ちょっと〜(笑)(笑)」 「あれ…あれ?💦💦💦」 「さっきポッケにしまってなかった?」 「ポッケ…あ!あった!ありました!!」 「(笑)(笑)(笑)」 『初デートを成功させるための8つのルール』には『デート代はスマートに支払う』とあったのにドジりまくりだ!初っ端からマイナスポイントが発生するなんて…!シネコン内の空調は暑くもなく寒くもない適温なのに、焦りまくってびっちょり汗をかいてしまうおれ。 やばい、巻き返さないと! 今日のデートは絶対に失敗させるわけにはいかないんだ……!!!!

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