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2-(2)※

 少年を捕らえた獣人は容赦なかった。嫌がって、懸命にばたつかせる細い両足にさえ苛つきをみせる。  近くで獲物を追う仲間のひとりを呼びつけると、抵抗する少年の片足を持たせ、限界まで広げさせた。少年の小さな蕾が、離れたルトからでもはっきりと見えるほどに。恐怖で縮む少年の象徴はぷらぷらと揺れていた。 「きっ、いっ、い、や、ぃ……」 「どれ、穴の具合を確かめてやる。が――死ぬなよ?」  右足を割り開かれた少年はすでに顔面蒼白だ。過呼吸気味に息を乱し、身動きなど完全に取れなくなっていた。それでも自由になる残りの左足を、しなやかに滑らせる。しかしわずかな自由さえ獣人の太い腕が阻んだ。体毛の多い獣人の片腕は、ピクつく少年の太ももよりも太かった。 「たっぷり遊んでやる。せいぜい楽しませろや」  獣人の巨大な肉体は、大きく開いた少年の股間に割りこむ。ルトから見えていた、小さな蕾が獣人の体躯で隠される。かわりに力強い腰が少年へと突き進んだ。 「ぎっ……ッ、ぎぁぁんひっ、ひぃいいぃっあぁぁ!!」  少年の身に何が起こっているのか。獣人の巨体で見えないが、獣人の腰の動きで見なくてもわかってしまう。  ルトは吐き気を覚えた。獣人は成熟した男だ、それに比べてルトたちはまだ子どもと言っていい。獣人と人間ではただでさえ体格差がある。もはや、声も失った少年の足は力なく揺れるだけになっていた。  血の匂いが漂ってくる。たまらず口元を覆った。きっと今、ルトの顔は血の気を失っている。直視できなくて、目を背けた瞬間、少年を押さえているラシャドと呼ばれた獣人と目があった。  口を、目を、塞いで。聞こえてくるのは、少年たちの悲鳴、すすり泣き、錆びた鉄の匂いと生臭い雄の匂い――そして、くちゅぐちゅという水音と、肌を打ちつける弾けた音だ。  地獄絵図、そのものだった。 「う……っ、ぐぅ……っ」  エミルを引っ張っているのも忘れ、吐き気が止まらずルトは足を止めてしまった。エミルはガタガタと歯を鳴らしている。ルトは粘つく視線をどこからか感じたが、視線の先を気にする余裕はない。  完全に立ち止まったルトのほうへ、ゆっくりと獣人の手が伸びてきた。つい先ほど、少年の片足をねじ伏せる手伝いをしていた、ラシャドという獣人だった。 「そこの。鬼ごっこは終わりか?」 「……っ」

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