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 重たい身を懸命に動かして、ルトはどうにか固まるエミルを突き飛ばした。とてつもなく太く硬質な腕が、身体に巻きつくのを感じながら。エミルに向かって声を上げた。 「走って! エミル、逃げるんだ、遠くに行け! 振り返るな! ――走れッ!!」  最初に数えた獣人は十人だ。対してルトたちは五十人という。いくらなんでも、獣人たちはここにいる全員を相手にはできないだろう。  十人か、あるいは数十人ほどが犠牲になって、獣人が満足すれば解放されるはず。少なくとも、今、このときだけでも。  青白いエミルが背を向けて走り出すのを見たとき、ルトの身体が宙に浮いた。獣人に片腕で持ち上げられた、と思えば、固い床の上に叩きつけられた。 「くっ……、かは……っ」  背に受ける衝撃で息がつまる。呼吸を忘れる。ルトは歯を食いしばった。すかさず、動きを止めた裸の胸をなぞられる。漆黒の獣人と目が合って、目に見えて震え出すのが自分でもわかった。  ガチガチうなる歯音がうるさい。強く押さえつけられた手首はすでに土気色で、早くも血が通っていないようだった。  ひゅぅっと、呼吸を思いだした狭い喉が空気を求める。背中にあたる上質な絨毯は、素肌を包んでくれそうな柔らかさ。なのに、ルトの身体はどんどん冷えていく。冷や汗を流す身体に、獣人の分厚い手が這った。獣人の大きくて硬い指が、ルトを味わう。 「いいな、お前。面白ぇ。これからしばらくは、お前で遊んでやる」  押さえつけたまま獣人が愉快そうに喉を鳴らす。黒い耳をピクピクとひくつかせ、同じく黒い尻尾を大きく揺らしていた。獲得した獲物を喜ぶように。彼は狼の獣人だった。  小さな両胸の突起を、行為に慣れた武骨な手で器用に摘ままれる。加減はしているのだろうが、ねじり取られるかと思うほど強い。白い肌の上で小刻みに震える赤い粒を引きちぎって、食まれるのかと恐ろしかった。小さなそれをこねて、引っ張り、押しつぶされた。 「あぁっ、あ、あ……っ」  他人の手で素肌をまさぐられるのは初めてだった。強制的に味わう未知の感触に身をよじれば、獣人が厚い肉体を押しつけてくる。確かな重みを太ももに感じ、ルトは、獣人の逸物がどれだけ猛々しいかを教えられた。 「はっ、や……っ」

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