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冷徹に現状を把握する獅子に、諫めた獣人が言葉を濁す。付き従う獣人は反論をやめ、厳しい声に一礼した。静かな礼を受けた獅子は、再び床で交わるルトたちを見た。
「とにかくだ。余はこれからこの後宮について各種族長と会合がある。いちいちお前が終わるのを待ってられん。後宮の公表を宣言する前に、形式だけでも済ませ、人間どもを正当に入宮させたら公に使わせてやる。ラシャド、此度の慣例は終わりだ。まだ出し終わらぬなら向こうでやれ。邪魔だ」
「はいはい、寛大なお言葉に感謝しますよ、皇帝陛下。おら場所替えだ、隅っこに行くぞガキ」
「ゃ……っ」
獣人は繋がったまま、ルトの裸体をひょいと持ち上げた。ルトの体内で放出の流れが変わる。広がる結合部は隠すものをなくし、頼りなく震える丸い尻は剥き出しにされたはず。
体格の小さな子どもが、巨大な肉体を受け入れさせられる姿を目の前で見ても、ひとつの眉根も動かさない。どころかルトを貪る獣を、さも当たり前のようにあしらうのだ。
己が進む道になんてことない小石があったから、邪魔だとつま先で蹴飛ばしてみた、そんな薄っぺらさだ。ああそうか獣人は――、誰も彼もが、狂っている。
「け……、の……」
力ない身体を抱きかかえられながら、ルトはぼやける視界を見開いて呟く。まともな思考が保てていなかったのだ。かすかなルトの囁きに、獣人たちの鋭い目が一気に集中した。
――けだもの。
その言葉を正しく発音できたかどうか、もはやルトにはわからなかった。ただ、黄金の両目が自分をじっと見つめてきたのを、朦朧とする意識で感じていた。
***
大広間に訪れた皇帝の存在により、淫靡な空気は一掃された。
「皇帝陛下がお見えになったぞ! 散らばっている人間を一か所に集めろ、急げ! ラシャドっ、お前は後ろで引っこんでろ。終わったらすぐに来い、役立たずがっ!」
怒号を発したのは九人の仲間を率いていた虎の獣人だった。つい先ほどまで子どもを凌辱していたとは思えない機敏さで、号令を受けた獣人たちが一斉に動き出す。
床で転がる虫の息の少年や、魔の手を逃れ壁に張りつく少年を、慌ただしく数人まとめて担ぎ上げる。大広間の中央に運び、どさりと落としたのが見えた。
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