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太い杭を埋められた穴は、自力では閉じられずぱっかりと開いた。強制的に流しこまれた、大量の粘つくものがルトの細い太ももを垂れていく。内腿を伝う冷たい感触に、濡れた穴が無意識にひくつく。
嫌な感触に身を震わすルトをよそに、獣人は寛げていた前を手早く整えたらしい。短い息を小さく繰り返していれば、広い肩に担がれた。中央に連れていかれる。山積みになった少年たちの隣に降ろされて、獣人は皇帝の後ろに足を進めた。
いつの間に集まったのか。皇帝の周りには黒いマントを着た大勢の人影がいた。身体つきからして男性だ。黒いフードを頭からかぶり表情までは見えない。
獣人から支配を受けるヌプンタは、閉ざされた国だ。外交はほとんど無くルトたち人間は、他国の情報をあまり持たない。だがマントを着ている彼らは明らかに獣人ではなかった。人間はあんな格好はしない、ならば魔術師だ。
マントの隙間から覗く手には、色とりどりの宝石がついた輪っかをいくつも持っている。手首につけるには大きくて、けれど首に飾るには小さい。その不思議な光景をルトはぼんやりと見つめた。彼らは次から次に、無言で山積みになった少年たちに近づいてくる。
意識がないひとりの少年を義務的に抱き起こし、不気味な彼らは傷つく身体に手をかざした。気を失っている少年に、血色が戻る。魔術師たちは少年の傷を癒しているのか。
呆けて気付かなかったが、すでに幾人もの少年たちが手当てを受けていた。治療を終えた魔術師は、かざした手を下ろし、持っていた輪を少年の足首に嵌めた。
遅れて来たルトに、別の魔術師の手が伸びる。ぽわ、とルトの身体が温かみを感じた。あちこち軋んで痛かった身体が嘘のように軽くなる。冷え切った身体がようやく安らぎを与えられた、そんな気がした。
もしかしたら、ルトの癒しもこんな気分になるのかもしれない。わずかに呼吸を楽にすれば、ルトの細い足首にも同じように輪が嵌められた。役目を終えた魔術師が、皇帝を振り返った。
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