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 聞けば、エミルは十二歳になったという。ルトより二つ年下で、ジャンより六つも年上の男の子。懸命なエミルの姿は、やはりジャンたちの姿と重なる。ルトにとってエミルは弟のような存在になりつつあった。 「ねぇルト。また、子守唄歌ってね。僕、ルトの声好き」  ジュースを飲み終えたエミルがルトの耳元で小さく言う。昨夜、眠れないというエミルに子守唄を歌った。さすがにジャンに重ねすぎかとも思ったが、エミルはとても嬉しそうに寝入った。  こんな状況だというのに、あまりに安らかな寝顔を思い出したルトの頬が緩む。恥ずかしそうにこそこそと内緒話をするエミルに、大きく頷き返した。  新たな変化が訪れたのは、さらに数週間が経ってからだ。暦帖こよみちょうがないので正確にはわからないが、おそらく後宮に来て二か月ほどたった頃。  異変は突如、真夜中にやってきた。 「う……っ、うぅ、いた、い……っ」  今では慣れつつあるルトたちの寝所だ。ずらりと横並びする、寝台のひとつで眠っていた少年が、呻き声をあげだした。  横向きになって腕を振り乱し、狭い寝台で激しく寝がえりを打っている。まさしく七転八倒しているのだ。震える少年の腕は、やがて自分の腹を抱えるように交差する。夜中に響く苦悶の声に、ルトを含めた何人かが目を覚ました。  尋常ではない少年の苦しがりように、ルトは寝台を降りた。何かにすがりつこうとしたのか、空を切った少年の片腕を握る。触れた腕は、じっとりと汗ばんでいた。 「どうしたの、大丈夫?」  何人かが不安げに様子を見るなか、眉根を寄せてルトは問うた。少年は唇をぶるぶる震わせて、か細い声を絞り出した。

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