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「お、お腹、が……、い、痛いよ……。焼ける、みたいに、熱いの、焼ける……っ!」 「……魔術師を呼ぼう」  少年の答えを聞いたルトの素早い決断に、周りの少年たちがざわつく。ルトたちの寝所には、飛報石(ひほうせき)という石が備わっていた。魔術師たちが扱う道具らしく、ルトたちの体調を常に魔術師が管理するための物でもあった。  ただ、魔術師を呼ぶと獣人たちに筒抜けになる。誰がいつ、どんな用事で呼んだのか。それを獣人たちは、翌朝には正確に把握していた。そのためルトたちが飛報石を使ったのは、最初の拷問ともいえる凌辱の名残で、体調を崩していたときだけだった。  だが精神的な疲れからか、ここ最近、何かを示し合わせたように、何人かの少年が調子の悪さを訴え始めている。  青白い顔をしていても我慢できないほどではないからと、みなが見て見ぬふりをしてきた。自分自身でさえも、戸惑う周りの少年たちも。それなのにここにきて、その飛報石を再び使うという。 「頑張ってるみんなには、悪いけど……この痛がりようは、さすがに無視できないよ。ちゃんと、魔術師に診てもらわないとだめだよ」  ルトは目線をあげて言い聞かせるように見渡す。周りが息をのむ間に、ルトは寝台から離れ、向かい壁に移動した。そこには埋めこみ式の棚があり、手前には、小さな土間を思わせる座敷が等間隔にある。  五、六人の少年が座れるほどの座間だ。簡素な丸いテーブルが設置されていて、卓上に置かれた、楕円形の石を振った。  水晶みたいに透明だった石が、染料を拡散されたように赤色に変色する。石全体が、完全に赤に染まったのを確認して、ルトは手を止めた。  飛報石をテーブルに戻すと、すぐ横に置かれた水差しを持って少年のところに戻る。肩を上下させて息をする身体をそっと起こし、水差しを少年の口に付けた。

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