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 強いものが生き残る。ゆえに、強き力が生命力の源になる獣人は、圧倒的に雌よりも雄が多い。溢れる雄たちが、自然界の生存本能で子孫を残そうと使うのが核種胎だった。  獣人に従う魔術師によって作られる種だ。体内に入れ、獣人の精をかけると、体液でふやけた種が溶けて、腸内で吸収される。吸収した内部に精をかけ続ければ、やがて種が実り、身体を作り変えるという。  子を育む偽子宮の胎嚢ができ、そこで子種を受けとめるのだ。たいてい、獣人は雄同士が番となり子を設ける。しかし獣人同士は生命力の強さから、互いの力が反発してしまう。子ができにくいのだ。  そのため何の力もない、か弱き人間の雄が格好の餌食だった。人間には女もいるが、生命力の違いからか種族の違いからか。女の子宮では子を成せなかった。だが獣人と同様、核種胎を用いた人間の男、それも完全な男性形になる前の少年ならば種を多く残せた。  けれど、人間に核種胎を用いるには問題も生じる。人間は獣人に比べて体力がなく脆弱だ。核種胎で繁殖どころか、命そのものを落としてしまう。  もとより生命力が強い、獣人用に作られたもの。出来上がった胎嚢には、獣人の生命力を宿しても、成長させられるほどの魔術がかけられている。  獣人ならば、子ができにくいだけで済むが人間は違う。核種胎を体内に取りこむことで体調を崩し、命を落とすものも当然いる。試しに人間の女にも核種胎を入れてみたが、人間の女はひとりも生き残らなかった。 「だが、核種胎でこの子のように異変が出ても、生き残る例外もある」 「例外……?」 「そうだ。その例外は滅多とない」

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